第5話の見所—緊張の連続!対策室の鬼気迫る交渉術に臨場感
第5話の見所は、これまでにない危機の連続と対策室の交渉のやりとりだ。実は第5話では、各シーンの台詞がとても長く、ノーカットで撮影されている。俳優さんたちの緊張感はマックスに達し、まさに現実の事件を彷彿とさせる現場の臨場感を見事に再現している。
誘拐事件では、多くの情報を最初から得ることは期待できない。SNSやメールなどを使って一方的に要求のみを伝えてくることも少なくない。そうした犯人との緊迫した交渉の過程をドラマでも再現している。
第5話では、誘拐犯人から10億円の身代金の要求の他、サンライズ物産のマーレーン駐在所の撤退という要求がなされる場面がある。要求の完全履行が難しい場合には、できない要求を否定するのではなく、むしろ履行を前提として回答し時間をかせぐことが重要だ。その際、相手の信頼の糸をつないでおくには他の要求事項に対して完全履行を約束することも最低条件となる。神狩かおりや西行寺は、極限的緊張感の中、交渉の末、10億円の履行を約束する一方、駐在所の撤退については時間的な譲歩を導き出した。
また、交渉術については、ひとつのルールが存在する。相手の信頼を得るということのほか、最初の段階では相手に少し花を持たせるという点である。どんな人間も自分より頭がよく交渉のうまい相手と交渉はしたくないはずだ。自分より交渉がへたで、この相手となら自分が有利に話を進められると判断できたからこそ、その相手と継続して交渉を続けることができる。そうした状況をさりげなくつくり、相手にそう認識させることこそが交渉の最初の一歩となる。ときとして冷静さを欠いて感情的な発言をしてしまうといった対応をしても、それが弱さを示す演技の一部であるなら効果的に働くこともある。神狩かおりの交渉術もその視点で見ると違った面白さに気づかれるかもしれない。坂手社長になりすました西行寺の交渉術も絶妙だった。
さらに、緊張した場面は続く。対策室メンバーは少ない犯人との対話の中から、背景音や発音などあらゆる情報を通じて犯人のプロファイリングに迫って行く。これは決して過剰な演出ではなく、一般的にこの種の事件で採用されている分析方法だ。こうした詳細かつ科学的な分析が、犯人を特定し、人質の救出に結びつく事例は少なくない。
表1は、実際に筆者が海外赴任・出張者の多いクライアント企業に提供している脅迫などの電話を受けた際の上司への報告用チェックシートだが、このような備え付けの書式を整備している企業は意外にも少ない。
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