親会社経営陣関与の不祥事に信頼回復の一手はあるのか?—『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(10)

【前回のコラム】「100%子会社で重大犯罪発覚! 親会社の社長はどこまで責任をとるべきか?-『リスクの神様』監修者が語るドラマの見所、危機管理・広報(9)」はこちら

『リスクの神様』最終話では、サンライズ物産の坂手社長(吉田鋼太郎)が衝撃的に解任され、白川(小日向文世)による新体制が敷かれるところから始まる。新体制とともに危機対策室は解散され、西行寺(堤真一)は社長室長に就任する。目の前の危機に忙殺されるかおり(戸田恵梨香)に対して常に先を見据える西行寺は、最終話で誰もが驚く最後の危機対策を実行に移す。しかも、その対策は、誰かの指示・命令によるものでなく、彼自身の信念に基づくものだった。西行寺は父親の復讐のためにサンライズ物産へ来たのか、それとも純粋に危機対策のために来たのか、ついにその謎が最終話で明らかにされる。

このコラムでは、毎回の放送後に『リスクの神様』の見どころや危機管理と広報の教訓、キーポイントなどを本ドラマの監修者で危機管理の専門家としての筆者の目線から解説していく。

第10話のあらすじ

役員会で坂手社長(吉田鋼太郎)解任の緊急動議が賛成多数で可決され、新社長に専務の白川(小日向文世)が就任した。西行寺(堤真一)は、白川の指示を受け、組織再編に伴い危機対策室が解散になり、今後は各部署に緊急対策担当を置く、とかおり(戸田恵梨香)たちに伝える。

しかし、かおりには、西行寺が坂手を裏切って白川社長を誕生させた真意が分からず、疑念を深めていた。翌朝、かおりは、由香(山口紗弥加)から、西行寺が社長室長に就任したと聞かされる。すでに西行寺は白川に3社の企業買収を提案し、役員会で承認されていた。西行寺が父親を見捨てたサンライズ物産に復讐をしようとしていると考えたかおりは、それを阻止すべく彼の行動をマーク。西行寺が、アジアグローバル証券代表のフォー(木下ほうか)と会っているのを目撃する。だが、ふたりを追おうとすると、突然現れた結城(森田剛)に止められる。

危機対策室に戻ったかおりは、西行寺のデスクに残されていた資料から、18社もの系列企業で実態の伴わない取引が行われていることを知る。去年1年で100億円近い資金が流出しており、そのほとんどはケイマン諸島にある3つの会社に集中していた。かおりは、坂手の自宅に押しかけ、資金流出の件を切り出すが…。

第10話の教訓—「すべては会社のため」と不正を行った者は常に反省がない!

ドラマを通じて不祥事企業の役員や上級管理職者が次々と辞任・退任に追い込まれていく。彼らは表現こそ違うものの、「すべては会社のため」「私がやっていなくても誰かがやっていた」「私よりも悪い連中はいっぱいいる」「なぜ私なんだ」と言い訳をする。不正を行った者の言い訳は聞きたくない。

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白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)
白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)

ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。

白井 邦芳(危機管理コンサルタント/社会情報大学院大学 教授)

ゼウス・コンサルティング代表取締役社長(現職)。1981年、早稲田大学教育学部を卒業後、AIU保険会社に入社。数度の米国研修・滞在を経て、企業不祥事、役員訴訟、異物混入、情報漏えい、テロ等の危機管理コンサルティング、災害対策、事業継続支援に多数関わる。2003年AIGリスクコンサルティング首席コンサルタント、2008年AIGコーポレートソリューションズ常務執行役員。AIGグループのBCPオフィサー及びRapid Response Team(緊急事態対応チーム)の危機管理担当役員を経て現在に至る。これまでに手がけた事例は2700件以上にのぼる。文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構 「安全安心」研究開発領域追跡評価委員(社会心理学及びリスクマネジメント分野主査:2011年)。事業構想大学院大学客員教授(2017年-2018年)。日本広報学会会員、一般社団法人GBL研究所会員、日本法科学技術学会会員、経営戦略研究所講師。

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