コラム

戦略PR視点で、大学・地方・アートを考える

4限目「先生!先生は企画をパクったことありますか?」「パクりとインスパイアとの境界線はどこですか?」

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【前回のコラム】3限目「先生!大学の広報って何をするんですか?」「オープンキャンパスの売りのコンテンツは何ですか?」はこちら

「片岡英彦の芸術大卒は武器になる」本日のアジェンダ

  • 企画をパクるのはいけないことですか?
  • 「パクり」とはオリジナル作品を下手に「マネる」ことですか?
  • 先生はアイデアをパクったことありますか?
  • あえて「パクる」と、うっかり「パクる」の違い
  • パクりとインスパイアとの境界線は何ですか?
  • 「パクる」ならば堂々と、相手をリスペクトしつつ、最大限のオリジナリティと付加価値を加えること

東北芸術工科大学の企画構想学科で戦略PRや企画構想に関する教鞭を執っている。最初のうちは学生との交流もぎこちなかったが、半年も経つとしだいに馴染んできた。

今、クリエイティブ業界で問題となっている「パクり」について学生から質問された。世間で批判されていることを、そのまま「いけないこと」だと学生に言うことはたやすいが、「インスパイア」(インスピレーションの動詞形)との境界線になると答えは難しくなる。私は答えに詰まった。

(※ここでは著作権侵害など法律的な要件とは別に考えてみたい。)

先生!企画をパクるのはいけないことですか?

企画構想をする際に、用語辞典などで関連する言葉を引いて語源などを調べることが私は多い。

ぱく・る 〔「パクり」 「ぱくぱく」などの「ぱく」を動詞化した語〕
(1)大きく口をあけて食べる。ぱくぱく食べる。 「池の鯉がえさの麩(ふ)をさかんに-・っている」
(2)商品や手形などを,だまし取る。盗む。 「手形を-・る」
(3)他人のアイデアを剽窃する。 「メロディーを-・る」

出所:三省堂 大辞林

今話題になっている「パクる」は、上記の3番目の用法にあたる。類語を調べると「エピゴーネン」という言葉がみつかった。「模倣者」、「亜流」、「身代わり」などの「パクり」と言われる行為の意味合いは、この「エピゴーネン」に近い。

先生!「パクり」とはオリジナル作品を下手に「マネる」ことですか?
「模写」も「パクり」になるのですか?

では、絵画などの世界では他者の作品を忠実に再現する「模写」も「パクり」にあたるのか?

「ひまわり」で有名なあのゴッホが、こんなふうに浮世絵をそっくり模写していたってこと、ご存知でしたか? 彼はこうして浮世絵を真似ることで、その構図、色彩感覚、線描画法といった描画技術を学んでいたのです。(略)こうした日常の印象的な一場面を写真のように瞬間的に捉えるのが浮世絵の特徴で、それはそのまま「印象派」の技法にも通じるのです。

出所:印象派と浮世絵 (1)—印象派の技法とは(浮世絵ぎゃらりい)

「技法」を学ぶ(場合によっては普及・保存する)ための行為が「模写」とされている。「パクり」と「模写」との違いがしだいに分かってきた。

と…ここで私がなんとも言えない違和感を感じたのはなぜなのだろう?

先生!先生はアイデアをパクったことありますか?

学生というのは実に容赦なく鋭い質問をしてくる。

私が専門とする戦略PRなどの「企画」の分野での「パクり」の話に入りたい。絵画やグラフィックなどの「可視化されるパクり」とは異なり、企画の分野では「可視化されないパクり」も考えられる。「表現のパクり」ではなく「コンセプトパクり」とでも呼べばいいのだろうか。

そして「可視化されないパクり」の場合は、どこからが「パクり」でどこまでは「パクり」でない(インスパイア)とされるのか境界線は曖昧になる。

例えば、私がある「アイスクリーム」のPRを企画したとする。すでに他社から販売されているアイスクリームと商品内容や価格などは、ほぼ同じということはよくある。

そして、他社では「本格派アイスクリーム」「自然でなめらかな味」という2つの特徴を販売戦略上の「ウリ」にしてすでに販売していたとする。「同じような商品」のPR戦略を考える上で、企画のコンセプトが似てくる可能性は高い。もちろんコンセプトを変えた方が「得」な時は変えることで戦略を差別化するが、先行する商品に対して「勝ち目」があると考える場合には、あえて同じコンセプトで市場に投入し正面から「ガチンコ対決」に持ち込むこともある(いわゆるフォロワー戦略)。

ここまでを整理する。

アイスクリームを製造販売する複数のメーカーが、「本格派」「自然でなめらか」という同じような商品(Product)コンセプトで、「同じ価格(Price)」「同じ販路(Place)」で、商品を、先行企業が新規商品を開発した後から、類似商品を販売開始するケースは多くある。このマーケティング戦略は「フォロワー戦略」と呼ばれ、「パクり」とは通常言わない(あるいは「パクり」だと揶揄されることはあっても非難まではされない)。

また、こうしたフォロワー企業のマーケティング戦略を考える際の購買ターゲットが同じになることや、そのためのメディア戦略が同じになることも普通にありうる。繰り返しになるが、フォロワー戦略自体を揶揄されることがあったとしても、これを「パクり」だとは非難されない(これを認めないと、ひとつの商品カテゴリーごとに一社が独占する市場になってしまい、競争も技術革新もなくなってしまう)。

ところが、ここから先の戦略レベルから戦術レベルの話になると話はまた変わってくる。

次ページ 「他社と同じコンセプトで「プレスイベント」を行った場合」へ続く

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