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アリペイ、近鉄百貨店が導入 中国の先行き不安をぬぐえるか

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「カード使えれば出費増える」

東京・渋谷では9日、「WeChat」を用いた中国人訪日客向けのイベントが開かれた。指定された30秒間に、「WeChat」を起動したスマートフォンを振ると、公園通り商店街の店舗で使える商品券が当たるというもの。1万2000人が参加し、実施から3時間ほどで300人の訪日客が引き換え会場に集まった。

経済状況が不安視されながらも、中国は世界最大の消費者“輸出国”だ。中国旅行研究院の推計では、2015年の中国人の海外旅行者数は少なくとも1億2000万人を見込む。2014年に国外旅行で使われた金額の合計は1648億ドル(19兆4000億円)に達した。

旅行目的では「買い物」が上位に挙がる。支払い手段を増やすことが、消費を拡大させるカギとなりそうだ。「もし、もっと日本で外貨両替やクレジットカードなどが使えたら」——日本政策投資銀行の調査では、中国人客の4割が「出費が増えたと思う」と答えた。

進み始めたモバイル決済導入

スマートフォンを使った支払いも急拡大している。最も利用者が多いのは中国のEコマース最大手アリババ・グループのモバイル決済「アリペイ(Alipay)」だ。中国の調査会社iResearchによれば、「ネット利用者の9割が使っている」という。

近鉄百貨店は14日、大阪市のあべのハルカス近鉄本店ほか4店舗で、「アリペイ」を採用すると明らかにした。訪日客に人気の化粧品売り場などで使えるようにする。本店販売推進部の訪日客担当が導入を進めた。5人体制で、台湾出身者も在籍する。

昨年末には、近鉄百貨店の髙松啓二社長が中国のアプリ「WeChat(微信)」の導入を検討する考えを示していた。「WeChat」は“中国版LINE”のようなアプリ。大丸松坂屋が決済手段として採用している。

「アリペイ」では、位置情報をもとに距離の近い加盟店舗を紹介したり、クーポンを表示する機能がある。連携する中国版Twitterの「Weibo(微博)」を活用した口コミサービスも利用できるという。近鉄百貨店のほかにビックカメラ、パルコほか5社も導入している。

ソーシャルメディアと連携することで、プロモーション効果も狙う。ホットリンク(東京・千代田)の調べでは、2015年1~10月に、中国ソーシャルメディアに書き込まれた日本関連の投稿は、前年比ほぼ2倍の約1670万件だった。およそ半数を「Weibo」が占める。

旅行先ライバルとの差大きく

この年末年始には中国経済の先行き不安が色濃くなった。近鉄百貨店は「いまのところ順調」(広報)としながらも、「この先も需要が続くか、懸念されることは確か。それだけに、売上の拡大策が必要」とした。

実際、日本の店舗側の施策には、まだ改善の余地があると言えそうだ。例えば、中国人旅行者のほとんどが持つという「銀聯(ぎんれん)カード」。発行元の中国銀聯は、銀聯カードが使える日本国内ATMの割合は50%、加盟店は40万店と発表している。

旅行先のライバル各国との差は大きい。韓国では、「銀聯カード」はほぼすべての店舗で利用でき、交通系ICカード「Tマネー」とも連携した。シンガポールではすべてのATMと小売業者の70%超、オーストラリアではATMの80%以上と小売業者の50%近くで使える。


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