コラム

アンバサダー視点のススメ

まずは「縦割り組織」の壁をぶち壊すところから始めよう。

share

縦割り組織のデメリットが明確化している

画像提供:shutterstock

前回のコラムでは、少し寄り道して最近、話題の広告代理店とコンサル会社の競合について考えてみましたが、この話と関連するのがデジタルマーケティング時代、ソーシャルメディア時代における企業のあるべき組織構造の変化でしょう。

マスマーケティング時代においては、いわゆるサイロ型と呼ばれる縦割りの組織構造の効率が良いと考えられてきました。宣伝部が広告を扱い、広報部がメディアリレーションを行い、サポート部が顧客からの問い合わせやクレーム電話に対応し、開発部が商品開発を行い、システム部が社員の利用するシステムの運用を行う。それぞれの役割を、それぞれの部署で集中して実施する形が一般的だったと思います。

宣伝部の中でも、テレビの担当、Webの担当が明確に分かれていて、それぞれが別の活動を行っている、というのは珍しくない時代でした。そもそも社内のコミュニケーションも紙や電話が中心で非効率でしたし、部門ごとの情報共有も大変だったわけです。そういう意味では、縦割りで分業をするという組織構造は理にかなっていたとも言えるでしょう。

グランズウェル

ただ、デジタル時代になり、スマホやソーシャルメディアが普及して、この縦割りの組織構造のデメリットが明確に出てくるようになっています。

象徴的なのが、ソーシャルメディアの普及による企業と顧客の関係値の変化です。ソーシャルメディアマーケティングのバイブルと呼ばれている「グランズウェル」では、5つの戦略でソーシャルメディアの可能性を表現しています。

5つの戦略の概要は下記のとおりです。

傾聴戦略:顧客理解を深める
会話戦略:自社のメッセージを広める
活性化戦略:熱心な顧客を見つけ、彼らの影響力を最大化する
支援戦略:顧客が助け合えるようにする
統合戦略:顧客をビジネスプロセスに統合する

私が所属するアジャイルメディア・ネットワークでは、それをサイクル上にした「アンバサダーサイクル」で表現していますが、ポイントとなるのはそれぞれの戦略は従来のサイロ型の組織では別の組織の役割であるという点です。

傾聴戦略というのは、リサーチに近い話ですからリサーチ部やマーケティング部の仕事かもしれませんし、コールセンターの仕事かもしれません。

会話戦略というのは、自社のメッセージを広めるという意味で広報部の仕事と言えるかもしれませんし、窓口や営業担当の仕事かもしれません。

活性化戦略は、ファンの影響力を最大化して売上に繋げるという意味で販促に近い仕事。

支援戦略は、顧客同士がサポートしあうことを支援するイメージですからサポート部とか啓蒙を行う部署の業務でしょう。

統合戦略に至っては、製品企画や経営企画の仕事です。

ソーシャルメディアの普及により顧客がメディア化し、企業と顧客の力関係が180度変わったのだから、企業と顧客のコミュニケーションの形や企業側の組織のあるべき姿もゼロから考え直さなければいけないというのがグランズウェルの一貫したメッセージです。もちろん、これらの顧客とのコミュニケーションを通じた企業にとってのメリットは、同じ顧客から生まれてくるため、一つの施策で二つ以上のメリットが得られることは良くあります。

例えば、「アンバサダープログラムとは何か?検討する際に必ず議論のループが起きてしまう訳」というコラムでご紹介したネスカフェアンバサダープログラムは、20万人を越えるアンバサダーから要望や感想のフィードバックが大量に戻ってくる仕組みが確立されています。メルマガやサンクスパーティーなど様々な形で、アンバサダーとのコミュニケーションを行い、ネスレの活動を知ってもらう努力をしています。

さらには、Webサイト上にゲーミフィケーション的な要素のある仕組みを構築して、アンバサダーの活性化を努力したり、専用のアプリを開発して顧客の珈琲を楽しむ時間の支援も試行錯誤されています。さらにはアンバサダーからアイデアを定常的に募集し、サービスや販促物などに積極的に反映されているのです。

個人的にも、なぜこれをネスレさんが実現できているのか、担当の方とお仕事をご一緒しながら日々学ばせていただいていますが、やはりネスカフェアンバサダーでは組織の縦割りの理論ではなく、顧客を中心に企業側が柔軟に動いているからこそ実現できていると感じます。逆に言うと、顧客からすると企業の部署がバラバラだろうが関係ないわけで、同じ顧客に対して別々の部署がバラバラにコミュニケーションを取るのはナンセンスとも言えます。

つまり、現時点で、組織構造が企業側の論理で縦割りになっている企業が、こうした顧客を中心にした活動に踏み込むには、当然のように様々なハードルが存在します。

次ページ 「課題を乗り越えるための組織とは」へ続く

Follow Us