電通 グローバル・ビジネス・センター グローバルメディア&デジタル室長/Dentsu media COO 頼 英夫 氏
1987年電通に入社。新聞局に配属後2000年から2年間、電通アメリカに出向。2002年に日本に帰国し、当時資本関係があったピュブリシス・グループとの提携業務に従事。メディアコンテンツ計画局、経営企画局などを経て2010年に電通ホールディングスUSA/電通ネットワークウェストのエグゼクティブ・バイス・プレジデントとして再びアメリカに赴任。イージスメディアの買収や電通のグローバルビジネス事業に従事し、2013年に帰国し現職。アジアを中心に展開するメディアエージェンシー事業のCOOを務める。
■質問
日本型広告ビジネスは、世界のマーケットで戦えますか?
■回答
日本型広告ビジネスは、アジア(世界)で戦えます。しかし、競争を勝ち抜くためには、デジタル・エコノミーによる変化に対応していかなくてはなりません。
デジタル・エコノミーが広告業界にもたらす変化
世界の広告業界ではブランド戦略を担うクリエイティブ・エージェンシーと、メディアプランニング・バイイングを行うメディア・エージェンシーが分業しており、それぞれが専門領域のサービスを提供していることが一般的です。
一方で、日本の広告会社は欧米とは多少異なり、クリエイティブとメディアの2つの領域が共存しながら成長してきました。そして、デジタルビジネスの成長により、グローバリゼーションとメディアのコンバージェンスが急激に進む今こそ、日本型広告ビジネスに勝機が訪れたのではないかと考えます。
それは、今後、日本型広告ビジネスが持つ、これまでの実績に裏付けられたクリエイティブとメディアの統合的なキャンペーンを企画・実行する能力と、コンテンツ・ビジネスなどに代表される特定ビジネスにおける専門知識がますます求められるようになっているからです。
デジタル・プラットフォームの台頭とともに、新しいメディアやCGMが成長し、現在、世界では1日に2700万ものコンテンツが生成されていると言われています。このような情報過多の時代、消費者の心を確実につかんでいくためには、ターゲットとするオーディエンスに対して、適切なタイミングで、適切なチャネルを活用した情報発信が必要です。これはアド・テクノロジーの進化により、ほぼ実現しています。
そして今、コミュニケーションのトレンドとしては、「アート×サイエンス」のバランスが重視されています。アド・テクノロジーの進化により情報発信の手法が劇的に効率化されるなかで、発信するコンテンツ(クリエイティブ)そのものの力が以前より増して求められており、改めて双方の最適なバランスが必要だという議論になっているわけです。このような加速的で大きな変化は広告会社のステークホルダーである広告主、媒体社、コンテンツホルダーにとって極めて重要なテーマになっています。
こうしたトレンドへの対応として、私ども電通の海外事業部門を統括しているDentsu Aegis Network(以下、DAN)は、コンテンツ(クリエイティブ)関連の領域に積極的に投資しています。またDAN傘下のメディア・エージェンシーでも同じくクリエイティブ機能を強化しています。その一例として、Dentsu mediaのシンガポール拠点であるDM2が制作したオンライン・ムービー「No Details Is Too Small」は、世界で最も権威あるデザイン・広告賞の一つと評されるD&AD 2016でペンシルを受賞しました。
クリエイティブ領域の能力をインハウスでも強化することで、Dentsu mediaがクライアントに提供するキャンペーン・パフォーマンスを、アド・テクノロジーを通じてだけではなく、コンテンツの力も駆使した形でさらに向上させることを狙っています。
ただ、アジアを含む世界での競争は決して生易しいものではありません。急速に進むデジタル化は、広告コミュニケーション以外にもオムニチャンネル、さらにはUberやAirbnbなどに代表される新しいビジネスモデルを創り出しています。市場環境の変化は、とどまるところを知りません。そんななかで、日本型広告ビジネスが、グローバルの広告ビジネスで勝ち抜くために、対応しなければならないポイントがいくつかあります。
「熱狂を創りだすリレーコラム 「Advertising Week Asia 2016」開催記念」バックナンバー
- なぜ「ADVERTISING WEEK」を日本で開催するのですか? 事務局長・笠松良彦さんに聞きました(2016/5/30)
- さとなおさん、広告業界で独立して仕事をつくっていくにはどうしたらいいですか?(2016/5/20)
- 広告業界から足を洗ったら、何か見えましたか?藤田明久氏(元cci取締役・前D2C社長)に聞く(2016/5/09)
- 日本の広告会社が真のグローバル企業として世界と渡り合うために何が必要ですか?(2016/4/21)
- インターネットの進化は、企業のコミュニケーション活動に役立ちますか?児玉太郎さんに聞く(2016/4/18)
- 広告主や広告会社とフィーの交渉はどうやっていますか?(2016/4/07)
- 嶋さん、日本のPRパーソンにはクリエイティビティが足りませんか?(2016/4/05)
新着CM
-
広報
世界三大刃物産地・岐阜県関市、「るろうに剣心」完全再現の真剣を展示
-
販売促進
広告クリエイターが語る これからの販促の必須科目は「客観力」
-
AD
クロス・マーケティンググループ
クロス・マーケティンググループ、マーケティングDXを推進する人材を募集
-
人事・人物
カゴメ、グローバルコンシューマー事業部長ほか(23年3月28日付、4月1日付)
-
AD
クリエイティブ
「コピーライティング×動画」の掛け合わせが新たな武器に
-
人事・人物
TOYO TIRE、Gマーケティング部長ほか(23年3月29日、4月1日付)
-
特集
はじめに/あとがき/解説でざっくりわかる 宣伝会議のこの本、どんな本?
-
広告ビジネス・メディア
Facebook Japanがパーソナライズ広告の仕組みを疑似体験するイベントを...
-
クリエイティブ
ヨルシカが楽曲など担当 生田絵梨花出演、サッポロビールの箱根駅伝CM