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コラム

熱狂を創りだすリレーコラム 「Advertising Week Asia 2016」開催記念

日本型広告ビジネスは世界のマーケットで戦える?電通 グローバルメディア&デジタル室長に聞く

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変わりゆく消費者の「信頼」の源とは

まず1つは、デジタル・エコノミーがもたらす変化の加速的なスピードでしょう。デジタル化が進むにつれて、事業の立ち上げに必要なイニシャルコストが低減し、既存市場への参入障壁が下がっています。さらに、通信・物流コストも下がり、資金調達の手法が多様化するなかで、ビジネスのスケールを拡大させるスピードが著しく高まっています。

データについても同様のことが言えるでしょう。私たちは現在、世の中にあるデータの1~2%程度しか活用できていないと言われていますが、その全体の90%以上は情報テクノロジーの進化にともなって直近2年間に生成されたものです。さらには、今後15カ月ごとにそのボリュームを倍増させていくと言われています。また、2030年に1兆のヒト・モノが繋がると予測されているIoTの普及によっても、流通するデータ量はますます拡大するでしょう。広告ビジネスも、これらのビジネスやテクノロジーの成長のスピードにしっかりと追いついていく必要があります。

対応していかなければいけない2つ目の変化は、デジタル・エコノミーが、商品・サービスに対する消費者の「信頼」の源(ベース)を大きく変えようとしていることです。10年ほど前までは、消費者は企業のブランド力や広告を通じて伝えられるメッセージをベースに、商品・サービスに対する「信頼」を築いていました。しかし今や、その「信頼」はオンライン・プラットフォームを通じて得られる経験価値の集合体をベースに築き上げられるものへと変化しています。

例えば、1万人以上のユーザーがネット上で、ある特定の商品・サービスを素晴らしいと評価したら、一般の人であればきっとその評価を信用してしまうと思います。北米を中心にEコマースを展開する某企業は、1週間に1万3000台以上の自動車がそのプラットフォームを通じて販売され、中には1台で50万ドル(約5500万円)もする取引もあるそうです。消費者がWebサイトに掲載される約8センチ四方の写真だけで50万ドルもの金額を支払う行動が意味するのは、消費者が同サイトのサービスに対して、自分、友人、家族、そして不特定多数の人々の経験情報をベースに「信頼」している、ということに違いありません。

さらには、デジタル・エコノミー時代の消費者にとって、国境という概念はこれまで以上に薄らいでいくでしょう。中国のソーシャル・メディア・プラットフォームであるWeChatは、現在3億人以上の利用者が存在していますが、そのうち約1億人は中国以外の国・地域の人々だと言われています。また、世界で今、最大の人口を有するマーケットは13億人を擁する中国ではなくユーザー数が16億人を超えるFacebookだと唱える説もあります。このような比較は少々おかしいかもしれませんが、確かにグローバルビジネスの観点からすると、世界の主要市場と同じ視点で、グローバルのメディア・プラットフォームが有するユーザーを1つの市場として捉え直すべき時期にきたのかもしれないとも考えられます。

広告ビジネスの未来を明るくするために

ソーシャル、モバイル、Eコマースの普及が進むにつれて、企業は不特定の個人の購買行動や嗜好を高い精度で知ることができるようになりました。そして、そこから得られる複数の情報ソースを組み合わせることで、企業はパーソナライズされたサービスを消費者に提供できるようになります。

このような状況のなか、グローバルビジネスを展開する大企業ですらも、一人一人の消費者が十分に満足できうるサービスのスピードやパーソナライズを実現し、消費者個人にとって最良の経験価値の創出やリレーションの構築に取り組まなければならない時代になってきたのだと実感しています。そういった意味で、グローバル市場における広告ビジネスは今、大きく革新しなくてはならない局面にあり、まさにデジタル・エコノミーがもたらす変化を最大限に活用したソリューションを必要としていると言えるでしょう。

こうしたデジタル・エコノミーがもたらす変革を理解し先取りしていくことが日本型の広告ビジネスが、アジアを含むグローバル市場での競争に勝ち抜くために重要なテーマとなることは間違いありません。

さらに、競争に勝ち続けるには、次々と迫り来る変革の波をその時代に要請されるものとして仕方なく対応するのではなく、ある意味積極的に楽しみながら、私たち自身が得意とする分野を理解しつつ、常に「Different & Better」であり続けることが必要となるでしょう。そして、細やかさへの徹底したこだわり、匠の技への尊敬の念、極めることを追求する精神、そして人をもてなす心など、日本人や日本企業が海外から評価される特性を存分に生かすことでイノベーションを創出し続けることができれば、日本、そしてアジアの広告ビジネスの未来は、きっと明るいものになると信じています。


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