近年、消費者が主体的に情報に触れる手段として、広報・PRは注目を集めている。年間120社以上を取材し、4月に『実践! プレスリリース道場 完全版』を刊行した井上岳久氏が「広報で勝ち抜く企業」の共通点について分析し、講演した。
(画像右上)井上岳久 氏
(画像右下)新刊『実践! プレスリリース道場 完全版』(宣伝会議刊)
(画像右下)新刊『実践! プレスリリース道場 完全版』(宣伝会議刊)
『広報会議』で約10年間、「実践!プレスリリース道場」を連載している井上岳久です。この連載を10年間続ける中で約120社のプレスリリースを取材・分析してきました。今日は「広報で勝ち抜く企業」というテーマで、広報が上手く機能している企業やメディア露出につながる企業が持つ、いくつかの共通点についてお話したいと思います。
近年、商品開発から販売戦略まで、すべてのマーケティングの柱としてPRを据える「マーケティングPR」という考え方が広がり、広報がとても世の中で注目されていることを体感しています。例えば、マーケティングPRを取り入れていない企業は機能性や安さといった消費者目線のベネフィットだけで商品を開発しますが、それだけではメディアは動きません。そしてこうした企業はコミュニケーションプランや販売戦略の策定に、広報が参加していません。予算に余裕があれば広報に流して、それによってうまくいけばラッキー、という程度の意識しか持っていないのです。
一方、マーケティングPRで成功する会社の商品開発は商品の企画会議から広報が参加して、コンセプトの開発からネーミング、販促計画まで、すべてにわたってPRの視点でメディアに注目される要素を盛り込んでいきます。メディアが「お! 」と注目するようなニュースバリューのある商品ができれば、広報がプロモーションを実施するとき、メディアはそれを大々的に取り上げます。さらに営業も広報と一体化していて、テレビや雑誌で取り上げられたことをアピールしながら市場に嵐を巻き起こす勢いで商品を売り込んでいきます。そうなると、商品はどんどん売れていきます。