テレビとネットの融合を訴えてきたけど、むしろひっつきすぎて不安になってきた件

【前回】「AbemaTVはネットがつくったテレビで、そしてテレビから分裂したメタテレビだ」はこちら

テレビとネットがひっついている?

画像提供:shutterstock

この連載もずいぶん続いています。スタートしたのが2014年12月ですから、もう一年半にもなりますね。「テレビとネットの融合」を掲げてきましたが、たった一年半でずいぶん融合が進んだ気がします。

前回前々回に扱ったAbemaTVはその典型でしょう。でもそれだけでなく、Netflixやhulu、dTVといったSVODサービスに注目が集まったり、TVerに代表されるテレビ局の見逃し配信サービスが当たり前になったり、あれよあれよという間にいろんなことが実現してきました。

私なんぞが別に「融合!融合!」と訴える必要もなかったのかもしれませんが、一方で「テレビとネットは融合っていうか、ひっつきすぎじゃない?」ということも出てきました。その典型が、スキャンダルの伝わり方、語られ方です。

今年に入って、スキャンダルが続いています。毎週のようにスキャンダルが起きている気がします。ベッキー不倫、SMAP解散危機、宮崎議員不倫、清原逮捕、保育園落ちた日本死ね、ショーンK経歴詐称、舛添都知事公費問題・・・と書き出していくだけでハラハラするようなことだらけです。中にはすっかり忘れちゃってたこともあり、時の流れる速さを感じます。

これらのスキャンダルの火元はもちろん『週刊文春』ですが、火がついたらあっという間に日本中に燃え広がります。火のスピードが速く、広がる面積も広い。この速くて広い燃え広がり方には、テレビとネットの融合が大きく寄与している気がします。明らかに反響しあっているんですね。

もちろん、前々から言われているように、Twitterで話されることの多くはテレビ番組がネタ元です。だからテレビが取りあげたことはTwitter上でも話題にされやすいです。

ただどうも、このところ感じているのが、テレビのほうもネットをよく見ているなあということです。

それがわかりやすく出たのが「保育園落ちた日本死ね」を発端にした流れです。この件は、私が個人的に追っている分野でもあるので、少し解説しましょう。

2月15日に「保育園落ちた日本死ね」と題したブログが掲載されました。はてな匿名ブログという、名前を明かさない代わりにホンネを生々しく書き込むブログでのことです。一億総活躍社会にかこつけて、保育園に落ちた恨み辛みを並々ならぬ筆力で書き連ねた文章でした。これがまたたくまにネットで話題になった。

それを受けて、「日本死ねブログ、ネットで話題に」との見出しで、各テレビ局がとりあげました。ネットで話題になったことがニュースになったのです。これまでも、ネット上の映像がニュースで使われたり、炎上事件が報道されたりはあったと思いますが、「ブログが話題に」というニュースはなかったんじゃないでしょうか。

いったんピークを過ぎた「日本死ね」ブログの話題は、今度は2月末に国会に登場します。民主党(現・民進党)の山尾志桜里議員が安倍首相にこのブログについて質問したのです。ところが安倍首相が「匿名なので確かめようがない」と言ってしまったうえに、自民党議員が「誰が書いたんだ」と野次を飛ばしました。

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よくよく聞くと、予算委員会で匿名の文書を扱うのは過去に問題あったので避けようと、事前に申し合わせがあったそうなんです。それなのに山尾議員が質問に使ったので強い反応として野次が飛んだのが真相。でもそういう解説抜きで野次の場面だけを切り取るのがテレビ報道の常ですね。安倍首相と自民党はすっかり、保活(子どもを保育所に入所させるための活動)で悩む母親たちの敵になってしまいました。釈明のためワイドショーに出演した某議員が「野次は悪かったが日本死ねはダメだ」と自ら火に油を注ぐような発言をして、いよいよ炎上しました。

これを受けて、国会前に「保育園落ちたの私だ」のプラカードを手に集まる運動が起こり、署名を集めて議員に渡そうという運動も出てきました。このような情報発信と偶然と迂闊の結果、世の中には「保育園が足りないのはなんとかせにゃならん」という世論がすっかりでき上がったのです。

この一連の流れの、テレビとネットの動きをグラフ化したのがこれです。

次ページ 「テレビとネットが増幅し合っている・・・」へ続く

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境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)
境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

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