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コラム

アンバサダー視点のススメ

1万人のアンバサダーと切り開く洋楽プロモーション(ユニバーサルミュージック)

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【前回の記事】「日本の「洋楽」市場を大きくするためのクチコミ戦略(ユニバーサルミュージック)」はこちら

ユニバーサルミュージックインターナショナルは2013年12月、日本の洋楽シーンの活性化という目標を掲げて「UNIVERSAL INTERNATIONAL アンバサダープログラム」をスタートしました。現在、約1万人の洋楽アンバサダーと一緒に取り組んできるプログラムの内容と成果にいて同社の石川大樹さんに聞きました。

今回のゲスト

石川大樹氏(いしかわ たいき)
ユニバーサルミュージックインターナショナル 洋楽本部 プロモーション部 第2グループ

2015年ユニバーサルミュージック入社。ユニバーサル インターナショナル洋楽本部にて宣伝を担当。アンバサダープログラムの運営・企画立案の他、ユニバーサル インターナショナル公認YouTuberプログラムなどをはじめとする様々なWEB施策を担当する。

 

アンバサダーがプロモーションプランを考える

藤崎:アンバサダープログラムの内容を教えてください。

石川:定期的に2つのことを行っています。1つ目はTwitterを活用したプロモーション、2つ目は3カ月に1度のペースでアンバサダーミーティングを開催しています。

Twitterプロモーションは、前回紹介した「ストリートプロモーション」のSNS版といったものです。例えば、新人アーティストの推していきたい曲のプロモーションへの協力をアンバサダーに要請します。

アンバサダーの方々は洋楽に対する関心が強く、もともと良いと思ったものを自発的に発信してくれる人たちです。楽曲の感想を投稿してもらうキャンペーンを打つと、高い確率で参加してくれます。皆さん自分の感想に加えて、YouTubeのURLを貼り付けるなど、いろいろと工夫してくれるわけです。その投稿を見たアンバサダーの友人たちが「どんな曲だろう?」とクリックして聴いてくれる。そして興味を持てば、さらに話題を広げてくれる、といういわゆるSNS上での拡散プロモーションが展開されています。

藤崎:洋楽に興味がない人に振り向いてもらうために、とても効果的なプロモーションですね。

石川:2つ目の「アンバサダーミーティング」は、プログラムの中で一番ユニークな取り組みかも知れません。当社のオフィスにアンバサダーの方々を実際に招いて、アーティストのプロモーション案について、スタッフと一緒に考えてもらっています。我々だけでは思いつかないような意見をもらい、それをプロモーションに反映することもありますね。

藤崎:どのような流れで行っているのですか?

石川:アンバサダーミーティングのメンバーを募集する時は、具体的なアーティスト名やテーマは出さずに「アーティストのプロモーションを考える会」とだけ伝えます。これは特定のファンが集まることを避けるためで、純粋に洋楽が好きだったり、高い関心を持っていたりする方と議論したいからです。そして参加するアンバサダーが決まったら、あらかじめ宿題を出して、ミーティングの当日にスタッフと一緒に考えてもらいます。

先日、ちょうど5回目のミーティングを行いました。我々社員だけのミーティングでは、どうしても作り手側の意見になりがちなのですが、アンバサダーの皆さんからはリスナーとしてのリアルで率直な意見が集まりました。

藤崎:これまでで印象的だったプロモーション案を教えてください。

石川:カーリー・レイ・ジェプセンというアーティストのプロモーションを本格的に始める時に、アンバサダーに「世の中の人に親近感を持ってもらうためのプロモーションアイデア」という議題で考えてもらいました。その時に、「彼女が料理する姿を見ると親近感が沸くのではないか」という意見がでました。

藤崎:料理ですか。それはかなり、おもしろいですね。

石川:確かに面白いので、その意見も参考に朝のエンターテインメントの番組内の料理コーナーで実際に料理をつくって、振舞うという出演にしたわけです。社内だけで考えていても、こういった意見は出てきません。

藤崎:アーティストはテレビに出て歌うことが定番だと思いますが、まったく違う出演方法にしたわけですね。

石川 大樹 氏

石川:その番組のオンエアを受けて、なんとCDが売れたのです。その事例が一番、印象的ですね。

振り返ると、最初の頃は我々からすると、ものすごく無茶だなと思う意見もガンガンもらいました(苦笑)。例えば、来日したら、有名な音楽番組で特集を組もうという意見や、どこかの街をジャックしてフリーライブを行えばいいのではといった意見もありました。ただ、それぞれスケジュールや街の規制など、乗り越えないといけない課題がありますよね。

藤崎:確かにファンとしてみたら、大々的に露出して欲しいわけですから、面白さ優先のアイデアをぶつけてきそうですね。私でもそうすると思います(笑)。

石川:そこで、我々もアンバサダーと付き合い方を変化させています。つまり、一緒にプロモーションを考える仲間になってもらいたいわけです。

藤崎実

藤崎:どういうことですか。

石川:ファンの意見を求める一方で、我々から「これはできません」という回答が多くなると議論が前に進みません。せっかくアンバサダーと一緒に考える機会があるので、できるだけ情報を共有するようにしています。単に、「いいですね」という通り一遍の返答で対応するのではなく、「どういう理由でそのプロモーションは難しいのか」というフィードバックを行うようにしています。

その結果、アンバサダーミーティングを重ねていくうちに、「上手にやればできそうだ」と感じられる意見をもらえるようになってきました。

藤崎:まさにアンバサダープログラムの理念のひとつ、“外部にいるファンという名のブレーン”ということですね。

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