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コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

「WIRED」創刊編集長ケヴィン・ケリーが語る、30年先の未来に起こる重大な変化とは?

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最も重要な方向性は「COGNIFYING」

最も重要なトレンドが、「COGNIFYING」(認知化していく)です。これは動詞で、「ものごとをより賢くする」という意味の造語です。

AI(人工知能)はすでに現代にも存在しています。それはこの50年、ゆっくりと進化してきました。iPhoneの「Siri」やAmazonのEchoなどは分かりやすい例ですが、ほとんどのAIは生活の中で見ることがありません。

例えば、病院ではAIがX線検査の結果を診断しています。それは、医師がするよりも正確に診断できるからです。あるいは法律事務所ではAIを使って証拠の精査をしています。なぜなら人間の弁護士よりも効率的だからです。また、AIは飛行機の自動操縦にも使われています。現在でも操縦のほとんどはAIがしていて、人間のパイロットが操縦する時間は全体の飛行時間の一部にすぎないのです。現代の自動車もブレーキの中にAIのチップがあり、人間よりもうまく操作してくれます。これらのどれもがすでに存在しているものの、私たちは普段目にすることがありません。

そして、直近の5年間で、このAIに新たな三つのテクノロジーが組み合わさり、発展しました。

その一つ目のテクノロジーが、「ニューラルネット」というソフトウエアです。そのアルゴリズムは50年前に開発されたのですが、これまではスケールアップがうまくいきませんでした。それを近年、カナダの研究者たちがニューラルネットを階層上に積み重ねれば、成功することを発見しました。これは「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれています。

二つ目のテクノロジーは、ハードウエアについてです。以前であれば、AIを実現しようとすると、何百万ドルもの非常に高価なスーパーコンピューターが必要でした。それが5年ほど前から、ビデオゲームなどに使われる小さなチップが安くなりました。こうしてGPU(グラフィック・プロセッサー・ユニット)が新たなプラットフォームとなり、AIが動くようになりました。

そして三つ目のテクノロジーは、ビッグデータの処理能力についてです。AIを訓練するためには膨大なデータが必要で、何千何万という事例を学習させなければならないのです。それだけのデータを準備する唯一の方法は、それらを一からつくるのではなく、日常のデータから抽出することでした。例えばAmazon、Google、Baidu、あるいはMicrosoftといった会社は、検索時に大量のデータを蓄積し、活用しています。

こうしてディープラーニング、GPU、ビッグデータという三つのテクノロジーが出そろったことで、本当に機能するAIが実現可能となったたわけです。

次ページ 「AIと人間の知能の違いを理解する」へ続く