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コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

「WIRED」創刊編集長ケヴィン・ケリーが語る、30年先の未来に起こる重大な変化とは?

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AIと人間の知能の違いを理解する

Googleの「AlphaGo」は世界で最も優秀な棋士に勝ちました。ビッグデータを使い、GPUで走らせて、深いニューラルネットを持ったAIがクリエーティブな手を打つことで、人間を負かすことができたのです。

人工知能に対してはいろいろな偏見がありますが、こういう知能は非常に興味深いといえます。例えば、電子計算機は計算に関しては皆さんよりスマート(賢い)です。GPSはあなたよりも空間のナビゲーションに関してはスマートです。そこで、こうした領域に人間よりもスマートなAIを利用するわけです。

例えば、自動車にAIを搭載したとしましょう。AIは人間と違って、気が散ったりしません。「家のキッチンの火を消してきたかな」、あるいは「大学で別の専攻を取ればよかったな」といったことを運転中に考えたりはしません。そこで、AIが搭載された自動車を販売する際の宣伝文句は「意識がない」ということになります。その方が、いいからです。

私たちは知能を一次元な存在で、直線的に良くなっていくと考えがちです。例えば、動物で一番IQが低いのはマウスで、チンパンジーはもう少し高くて、人間が一番高い。そして人間の中でもIQの低い人、平均的な人、天才的な人がいる。しかし、これは知能に関する間違った見方です。

私たちの頭脳や知性は、何十あるいは何百種類もの思考が組み合わさった複雑なものです。例えば、人間の知能は演繹的な推論や感情的知性、長期的な記憶など、いろいろな種類の思考が組み合わさっています。それは、どちらかといえばシンフォニーのようなもので、いろいろな楽器が音を奏でているようなものです。

動物の場合も異なるシンフォニーを持っています。私たちと同じような楽器を奏でる動物もいれば、特定の領域においては人間よりも長じた能力を発揮する動物もいます。例えば、リスは何年も前にナッツを埋めた場所を記憶することができ、人よりも優れた記憶能力を持っています。

多くのAIは、こうした複数の思考能力を高めたものです。つまり、重要なことは人間とは違う思考を持っているということです。ここにコペルニクス的な革命があると思います。

私たちは、つい人間の知能は汎用的なものだと思い込んでいます。つまり、私たちの知能は、周辺にある知能よりも常に高いと考えているのです。そして、AIも1種類の知能しかないと思っています。しかし実際には、多様な頭脳や知能をつくることができるのです。

こういったさまざまな種類の知能をつくっていくことで、私たち人間の思考が中心にあるのではなく、辺縁にあることが分かってくるでしょう。

これからのAIには私たちとは異質の知能として、人間と違う考え方をしてもらうことで、新しいイノベーションや経済圏をつくっていくでしょう。

次ページ 「AIは第2の産業革命を起こす」へ続く