コラム

広告の中の人 次世代を担う注目のタレント

土屋アンナ、「女優の仕事はアート」自分の引き出しで人を魅了する

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8月31日に開催された、「プロモーション&クリエイティブフォーラム2016」のトークショーに、数々の人気CMを手掛けるクリエイティブディレクターの山崎隆明さんが登壇。特別ゲストに土屋アンナさんを迎え、e-Spirit足立茂樹氏をナビゲーターに広告制作の舞台裏が語られた。

広告は永遠の邪魔者なのか

土屋アンナ
Photo /杉能信介

足立:山崎さんは、広告というものをどのように捉えていますか。

山崎:僕は、「永遠の邪魔者」だと考えています(笑)。多くの人にとって、広告は見たくないもの。そのことを前提に、いかに企業のメッセージを、世の中の人が見たいもの、聞きたいものに変換するかが自分たちの仕事だと思います。広告ってもともと、商品の自慢話だったりするじゃないですか。それが視聴者を遠ざけている原因だと思うので、商品をいかに褒めず、けなさず、ありのままをチャーミングに伝えるかが重要です。

足立:興味のない人たちに、興味を持ってもらうにはどうすれば良いのでしょうか。

山崎:まず嘘をつかないということ。

あと、脳を通してメッセージを伝えようとするより、生理的に人間が反応するものを作品の中に織り込むことが大事です。正しいことを言えば振り向いてもらえるわけじゃない。だって、自分の嫌いな人がいくら正論を言っていたとしても、受け入れられないじゃないですか。

足立:そうですね。

山崎:それが色濃く出るのがCMという環境なので、見たくない人たちが、パッと見ただけで目を奪われるか、理解できるか。そこが自分のCMの生命線だと思っています。

足立:企画はどう考えるのですか。

山崎:僕の場合、とてもシンプルで、頭の中には 、“What to say(何を言うか)”と、“How to say(どう伝えるか)”の2つのレイヤーしかありません。広告には巨額の予算が投下されるので、立派なことを言わなければと思いがち。

でも、立派なことを言おうとするほど、当たり障りのない内容になって、誰にも届かないものができてしまう。広告の役割がメッセージを届けることにあるなら、本来は1対1のコミュニケーションの延長に広告もあると考えるべき。だから、僕は極力、友達に話しかけるような語り口でCMをつくります。

足立:伝えるメッセージはどんなものでもいいのですか。

山崎:いま何を言えばいいのか、何を言われれば自分が商品を買いたくなるか、消費者の立場で考えるのがコツですね。それと、CMで届く容量はせいぜい15文字くらいだということを意識することです。

足立:たった15文字ですか!?

山崎:送り手からしたら、もっと詰め込みたいと思われるでしょう。でも、1カ月に流れるCMって、約3000本もあるんです。そんな中で、目一杯にこちらが言いたいことを盛り込んでも、聞いてもらえませんよね。メッセージを絞り込むことが大事です。

土屋:山崎さんがつくる映像は、絵もインパクトがありますけど、それ以上に音が耳に残りますよね。昔の*1 「細マッチョ、ゴリマッチョ」のCMだったり。

*1 サントリー「プロテインウォーター」2009年

山崎:言葉も含め、“音”は大事だと思っています。膨大な予算をかけて、ものすごい映像を撮影したとしても、モニターに背を向けている人を画だけで振り向かせることはできないじゃないですか。でも「ねぇねぇ、ちょっと」と呼びかけられたら振り向きますよね。

足立:CMに出演されるキャストの方はどうやって選ばれるのですか。

山崎:まだ世間の知らない意外性を出せそうな方や、単純に自分が視聴者として見た時に、魅力的だと思う方にお願いすることが多いです。アンナさんは、綺麗でフォトジェニックなのに、*2「タンスにゴンゴン」で悪女役「ゴン子」を演じていただいたように、ユニークな作品もこなせる、女優としての幅が広いところがとても魅力的です。

*2 KINCHO(大日本除虫菊)「タンスにゴンゴン」 『ゴン子篇』2015年

土屋:ありがとうございます!人の目に留まるものって、美しいだけではないですよね。それに、こういう仕事をさせていただいているので、監督の思うものだったら、どんな顔でもします(笑)。

私はモデル、音楽活動、女優、どの仕事もアートだと思っています。自分の引き出しから色々な表現を出して人を魅了することに加え、アートを共につくる制作者の人たちの思いにどれだけ近づけられるか。CMの場合は監督が描いている世界観を自分が描けるようにありたいと思っています。

足立:アンナさんは今後、どのような活動をされていきたいですか。

土屋:なるようになる!です。

山崎:名言ですね。

土屋:「こうなりたい、ああなりたい」は、描けば描くだけ大きくなりますけど、周りの方がいて、出来上がったものを見てくれるお客さんがいるからこそ、お仕事ができる。だからどんなに自分が、がむしゃらに動いたところで最後に決めるのは周りなんですよ。どの仕事にも正直に、コツコツ積み重ねた上で、なるようになったらいいな、と思います。でも、この業界にいられる以上、いい作品を手がけていきたいです。

ワトソン・クリック
山崎隆明

京都府生まれ。1987年電通入社。2009年ワトソン・クリック設立。リクルート ホットペッパー(アフレコシリーズ)、金鳥(つまらん)、サントリー(細マッチョ)をはじめ、日清、明治、TOTO、マンダム、ダイハツ、タマホーム、みずほ銀行、CCJC、DMMmobile、シマホなど数多くのCMを制作。直近では関ジャニ∞の女子ユニット、キャンジャニ∞が8月5日にCDリリースした『CANDY MY LOVE』の作詞・作曲も手がける。クリエーター・オブ・ザ・イヤー、クリエーター・オブ・ザ・イヤー特別賞、TCCグランプリ、TCC賞、TCC最高新人賞、ACC金賞、ACC企画賞、広告電通賞部門賞ほか受賞多数。

 

土屋アンナ(つちや・あんな)

ミュージシャン、モデル、女優として多彩な活動を続けるマルチアーティスト。1998 年、モデルとしてデビュー。若者に絶大な人気を博す中、2004 年には映画「下妻物語」に出演し、日本アカデミー賞新人賞、助演女優賞、ブルーリボン賞最優秀新人賞を初めとする8 部門を受賞。ミュージシャンとしては、2002 年にヴォーカルとしてデビュー。現在は世界43カ国でのCDリリースなど、国内外問わず、ワールドワイドな活動を展開、精力的な活動を行っている。

 

e-Spirit
足立茂樹 代表

キャスティング会社e-Spirit 代表。博報堂出身。現在は50名のスタッフで年間2000本余りのキャスティングを行う一方、『がんばる人を応援する』を社是にまだ売れていない役者・モデルの売り出しに芸能事務所と協力しながら尽力。

 

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