「コピーライターになるために、いちばん大切なものは何ですか?」―それは、ポートフォリオです。ポートフォリオは、あなたが書く、あなたのオリジナルな物語。ハリー・ポッターのようなもんだな、とふと思ったこともありました。表紙をめくると心つかむ導入部に誘われ、魔法にかけられたようにどんどん読み進み、わくわくしてワンダーランドをあちらこちら飛び回り、興奮がさめないまま最後のページまで。「この人、すごくチャーミング!」と思わせられれば、勝ちです。今回は、そんな「ポートフォリオ力」についてお話しします。

黒澤晃 Akira Kurosawa。
横浜生まれ。東京大学国史学科卒業。1978年、広告会社・博報堂に入社。コピーライター、コピーディレクターを経て、クリエイティブディレクターになり、数々のブランディング広告を実施。日経広告賞など、受賞多数。2003年から、クリエイティブマネージメントを手がけ、博報堂クリエイターの採用・発掘・育成を行う。2013年退社。黒澤事務所を設立。東京コピーライターズクラブ(TCC)会員。
未経験ですが、ポートフォリオはできますか?
私の著書を読み、公式Twitterアカウント「
」に投稿していたある女性。コピーライターにどうしてもなりたい!どうしたらいいんでしょう?と相談をされました。
話を聞いてみると、大学を卒業してから、5、6年、広告業界とは無縁な会社で働いていましたが、コピーっておもしろいな、とある交通広告を見て思ったそうです。そこで、一念発起。「とにかく書いてみよう。やってみよう」と、宣伝会議のコピーライター養成講座に通い始めました。
苦しい瞬間もありましたが、なんとか食らいついて、必死に仕事の合間に課題のコピーを書いて過ごす日々。「みんなうまいなぁ。ワタシはヘタ。落ち込む・・・」「やっぱり、向いてないかもしれない・・・」「いや、書くことが楽しいんだから、やり続けられるかも・・・」と気分は上に行ったり、下に行ったり(定位置はまんなかよりやや下あたり)。
そんな悩める彼女に、私のアドバイスはかなりシンプルで「一度、ポートフォリオをつくってみたらどう?」でした。
「未経験なんで、世の中に出た広告は当然ないし、できるでしょうか?」「コピーライター養成講座でほめられたコピーとか、賞に応募したコピーとかを集めてさ。つくってみると、今自分に足りないものがわかるよ」「やってみます!」