コラム

野呂エイシロウ「テレビPRで、売り上げをつくる!」

東芝の人事部は、広報をどんな仕事と思っているのだろう?

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【前回コラム】「企業は、いつから非難と戦う時代になったのか? — 日清のCM問題から見えてくること」はこちら

2月半ば、広報という仕事が珍しく大々的に注目を浴びた。
東芝が転職情報サイト「DODA」で広報職の契約社員を募集したのである。
しかも「メディアコントロールができる人材」というめずらしい募集だ。

この募集によって東芝の焦りの一端が分かる。
というか、人事部はどうしてこの時期に募集したのだろうか?
想像だが、取材が殺到していて人が足らないのかもしれない。
今の人材が辞めてしまうので人手が足らないのかもしれない。

もしかすると東芝の人事部は、広報という仕事を軽んじているのかもしれないとも思う。

メディアコントロールできる人材を、通常の募集で集められるというのがそもそもの間違いだ。万が一、そんな人材が採用できたらそれは東芝の人事部の力だと言えよう。
そのような特殊な能力をもった人材は通常の求人市場にいない。

そのような逸材は、ヘッドハンターに頼んで探すのが通常だ。
でも、募集しているのは契約社員なので非常に難しいだろう。まあ飛び抜けてギャランティが高いならあり得るとは思うが。

とはいえ、僕の知っている限り、今の東芝に雇われてメディアコントロールできるほどの人材が浮かばない。この業界に20年近くいるが、適切な人材が浮かばない。
もちろん、僕でも力不足である。

日本経済新聞、NHK、テレビ東京、日経ビジネスなどのメディアをコントロールできる人材が果たしているだろうか?求人市場に。しかも今回の発端は2015年の日経ビジネスの記事であり、コントロールするのは至難の業である。過去の僕の経験では不可能だ。

メディアのスクープによる経営破綻で思い出されるのは、山一証券である。破綻の引き金を引いたのは、週刊東洋経済の1997年4月26日-5月3日合併号の記事だった。
広報に携わる者なら誰でも知っているケーススタディである。

今回も、その二の舞になる可能性がある。既にメディア各社は「解体」を前提として記事を書いている節がある。山一証券の時に似ていると思う。果たして、このまま日経ビジネスが引き金を引くのか?それとも逃げ切るのか?ちょっと模様眺めである。

「メディアコントロール」宣言の意味

今回の募集で興味深いのは2つのポイント。
「新生東芝」と「メディアコントロール」という言葉である。
新生東芝ということは、未来があることを示唆している。山一証券のように破綻せずに前進する自信があるのだろう。

だが、その一方で契約社員とは非常に弱気である。もしかすると、通常の人事評価では、フィーを払いにくいので契約社員にしたいのかもしれない。それだけ高額ということかもしれない。契約社員ということで軽視しているのは僕の見方の間違いかもしれない。

しかし、ちょっと例えが違うが、プロを雇うにしてもゴルゴ13に「契約社員にならないか?」とは頼まないだろう。きっと。その辺りの感覚の違いをちょっと感じる。

もう一つは「メディアコントロール」という表現を使ったことである。
これは、人事と既存広報のミスである。

東芝という会社が、「メディアコントロールしたいと思っている」というのを世の中に知らしめてしまった。と、同時に「これから出る情報は、メディアコントロール配下なので嘘かもしれません」ということになる。

戦時中の情報統制をしたいわけではないことは承知の上だが、あえてここで次の戦略を公表する必要性はないかなと思われる。また、メディアコントロールができると思っている節があるのも興味深い。

もちろん、メディアコントロールは悪いときばかりではない。いい時にも使うが、東芝が今求めているメディアコントロールとは、会社をメディアから守るコントロールだと想像される。

次ページ 「東芝が探していたのはスピン・ドクター?」へ続く

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