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コラム

野呂エイシロウ「テレビPRで、売り上げをつくる!」

『WBS』大江キャスターのマスク着用で世の中の見本に テレ東のブランドも向上

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1月18日のテレビ東京『WBS(ワールドビジネスサテライト)』である“変化”が起こった。メインキャスターの大江麻理子さんが、VTRあけにマスク姿で登場したのである。スタジオの解説者とやり取りをするときに、白色のマスクをしていたのだ。

『WBS』の出演者は、効果が限定的なフェイスガードではなく不織布のマスクを着用していた。

テレビ東京は、番組のオフィシャルHPでもその意図を説明し、広報部もその意義を説明した。それによると、番組内で1人でニュースを紹介するときはマスクをとり、解説委員など他の出演者とやり取りをするときは両者ともマスクを着用する、というルールらしい。

そして、テレビ東京はTwitterやフェイスブックページで、マスク着用に対する視聴者からの意見を求めている。番組サイドも、何かしらの議論が巻き起こるだろうと予想していたんだろう。また意見を聞いてから次のステップに移行しようと考えているのかもしれない。つまり、今回の取り組みは実験的要素が大きいのだろうと思う。

大江麻理子キャスターの判断ではない

翌日、19日火曜日に出演した相内優香キャスターもマスクをしていた。しかも、大江、相内両キャスターとも、マスクを着用する理由を説明する際に「WBSでは…」と、番組名を主語にして話していた。月曜日だけなら、大江さんが「感染したくない、もしくは、逆に感染させたくない」という思いからマスクを付けたのだろうと思われるが、主語が「WBSでは〜」という限りは番組の方針であろう。

マスク着用はスタジオだけではない

番組内では、中継でつながっているニューヨーク支局の宇井五郎記者が、アメリカからマスク姿で中継する場面もあった。また、ロケVTRの中で電話取材をしている記者も、電話口でマスクを付けている。スタジオ内の解説委員もマスクを着用していた。

その一方でVTR中には、記者会見でマスクをしていない政治家の姿が映っている。その様子が非常に対照的だった。

テレビは世の中の見本でもある

政府は5人以上の会食の自粛要請をしているにもかかわらず、実際には多くの政治家がそれを破っていることがあからさまになり、批判の的となっている。そう、まずは政治家が襟を正せ、というのが世の中の大半の意見である。「政治家は特別」というは過去の話である。「気をつけていればいい」という時代はとうに終わったのだ。

特に今回の新型コロナウイルスに関しては、本当に多くの国民が苦しんでいるという現実がある。そんな中、「マスク」「手洗い」を呼びかけている側のマスコミの人間が感染した、もしくは感染させてしまった、となれば批判の的となりかねない。

もちろん、充分に気をつけていた上での感染ならば仕方がない。だが「テレビ画面に映っている時にマスクをとっているのは仕方がない」という理論がいつまで続くのか分からない。今回の非常事態宣言下でも、毎日東京では1000人規模で感染者が増えているのだ。

そんな中、『WBS』がこうした対応をとったのは、「会話をするときには、お互いが感染源にならぬように」という配慮だろう。また、「キャスターもマスクをしているんだから、視聴者の皆さんも気をつけて」というメッセージも込められているのかもしれない。メディアも視聴者に向けてマスクをすることを呼びかけているのだから、その張本人がマスクをしていないのはある意味、矛盾である。

本当はNHKが先手を切るかと思っていた

筆者の感覚から言えば、公共放送であるNHKが先手を切るだろうと考えていた。だが結局、テレビ東京が先手を切った。

実際、NHKの正籬聡(まさがきさとる)放送総局長は1月20日の会見で、「状況に応じて判断したい」と述べ、すぐにマスク着用を導入することを事実上否定した。テレビ東京は、新型コロナが発生した2020年4月に「社員の出社2割で放送を続ける」という方針を発表した。これはどの局よりも早い判断だった。

筆者の個人的な感覚だが、最近のテレビ東京は機動力が非常に優れていると思う。経営者の判断もあるだろうし、会社の規模が他社に比べて小さいというのもあるだろう。あとは、選挙のときに独自に再放送をするなど、独自編成も以前からある。だから他の民放やNHKがマスク着用をやる前に独自に実行をしたのかもしれない。議論が巻き起こってはいるがこれはいい見本だと言えよう。

次ページ 「出演者のマスク議論は何度かある。」へ続く