コラム

アンバサダー視点のススメ

納豆のタレと容器に見る、日本人らしい繊細な感覚。

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食生活と流通の変化が容量を変えた

そもそも納豆はその昔、多くが200gの大容量で販売されていたのだそうです。200gといえば今の約4倍の量です。形状も三角の経木に包まれたものが主流で、タレやカラシも付いていませんでした。ではなぜ200gだったのか。その理由は家族みんなで納豆を食べるためだったそうです。

しかし、1973年・1974年(昭和48年・49年)頃から、日本人の家族のあり方と食生活が変わってきたのだそうです。つまり、核家族化が進み、みんなで揃って食卓を囲む機会が減ったこと。さらにはスーパーの発展で食料品の物流が整備されたことで、納豆の食べ方が変化していったというのです。

それらを反映させた形で1977年(昭和52年)、太子食品工業は「これからは核家族の時代」と、業界初のタレ付きミニカップ「まめちゃん納豆」を発売します。どうやらこの商品が、一般流通向けのタレ付き納豆の元祖のようです。

ちなみに納豆業界最大手で、おかめ納豆のブランド名で有名な「タカノフーズ」のサイトを見ると、1970年代に発売されていた納豆は110gがメインだったことがわかります。
そして「タカノフーズ」は、1982年(昭和57年)に、現在も販売中の超ロングセラー「小粒ミニ3」(現:極小粒ミニ3)を発売します。この商品名の“ミニ”は、おそらくそれ以前の商品が100gなのに対して、50gになったことから名付けられたのでしょう。

つまり、納豆の容量をひとり分にした点が重要なポイントなのですね。

「タカノフーズ」のサイトには、「家庭内の個食化が顕著になった」「特に個食化のニーズにマッチしたミニ化」という文言が出てきます。どうやら「個食化」がキーワードのようです。

つまり、例え家族がいても、みんなでひと瓶のお醤油を使うより、個装されたタレを個別に使う個食ニーズに合わせる形で、容量も食べやすさも進化したというわけです。

ここまで顧客視点に立つわけですから、小袋の切れ目も、当時から工夫されていたと考えるのが自然です。便利の追求にはキリがありませんが、それを突き詰めるのが日本人らしさと考えることができます。

顧客視点とは自分視点を大事にすること

納豆の容量の変化や、タレの同梱化、切れ目の工夫は、メーカーが世の中の状況や人の暮らしを的確に捉えた結果だということが、お分かりいただけたかと思います。

たかが納豆、されど納豆。人の暮らしに密着している食品メーカーだからこそ、時代と共に移り変わる顧客のニーズを誰よりも的確に捉えてきたというのは、大いに参考になるのではないでしょうか。

納豆における顧客視点のトリビアの最後は、容器の工夫です。みなさんは発泡スチロールの容器の底に凹凸があるのをご存知でしょうか。あの凹凸は納豆を容器に入れたままかき混ぜて、糸を引くことができるようにした工夫だそうです。ここまでくると、納豆、本当に恐るべしです。

最後に、「どこからでも切れる」が謳い文句の「マジックカット」のお話を。その開発秘話にも顧客視点がありました。

「マジックカット」は、旭化成パックスの前身・旭化成ポリフレックス時代の専務の個人的な体験から生まれたものでした。専務が出張帰りの新幹線で缶ビールと燻製イカを買った際、老眼でパックがうまく切れず、結局、ツマミなしで缶ビールを飲むことになってしまったそうです。そこで本社に帰ってから専務は技術陣に「指先で簡単にどこからでも破れる袋はつくれないか」と持ちかけ、そこから研究・開発が始まったとのこと。

つまり、顧客視点の実践とは、実は自分が不便に思うことの解決でもあり、自分がどこまで「一人の顧客」になれるか、ということでもあるのです。

これからの企業発展には顧客との関係を深めることが必要です。『顧客視点の企業戦略 -アンバサダープログラム的思考-』は、企業とファンが一緒になって課題を解決したり、マーケティング活動を行ったりする方法論や事例について解説した書籍です。今までのマス・マーケティングに加えて無理なく実行できる点にも特徴があります。この機会に是非ともお買い求めください。

はじめに:「新たなる現実」を受け入れて、次へ向かう指標としての顧客視点/第1章:顧客視点がないと「マーケティング」ではない/第2章:マーケティングを顧客視点で組み替える/第3章:企業の目的は「顧客を創造する顧客」の創造である/第4章:顧客と一緒にマーケティングする/実践レポート:アンバサダーの体験設計(上田怜史)/第5章:アンバサダーが企業にもたらす変化/第6章:顧客視点経営がビジネスを変える

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