日本を先行しているアメリカのメディア界では、どのような変化が起こっているのか。激動するメディアの震源地とも言われるニューヨークで話を聞いたのは、Jeremy Caplan(ジェレミー・キャプラン)氏。昨年刊行された『デジタル・ジャーナリズムは稼げるか』の著者 ジェフ・ジャービス氏とともに、メディアの未来戦略について提言をするキャプラン氏は、ニューヨーク市立大学ジャーナリズム大学院で教育担当ディレクターを務めている。「メディアにとっての最大の価値は、彼らが持つ“スキル”だ」と語る真意とは。
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—今回は、アメリカにおけるメディアの最新事情についてお伺いできればと思います。まず、最近顕著なトレンドとしては、どのようなものがありますか。
メディアを取り巻く変化は激しいので、本当にさまざまな潮流がありますが、いくつか象徴的なトレンドがあります。まず一つは、狭いテーマにフォーカスしたメディアが増えているということです。
「AXIOS(アクシオス)」や「The Marshall Project(マーシャル・プロジェクト)」、「The Outline(アウトライン)」など、最近アメリカで勢いのあるメディアに共通して言えるのは、他のメディアがまだやっていないことを明確に打ち出して、自分たちのポジションとしてのオリジナリティを確立していることです。
ここ数年で台頭していた「Medium(ミディアム)」や「BuzzFeed(バズフィード)」、「VICE(ヴァイス)」などは、広いテーマをカバーし、より多くの読者を獲得することを重視していましたが、先に挙げたメディアは、ターゲットとする読者をはじめから絞っています。
メディア全体で見ると、いまお話ししたような、ニッチなテーマを掲げることで深い読者を開拓しようとしているメディアと、大きなメディアとしてどれだけ読者を拡大できるかに注力しているメディアとで、対極化が進んでいます。