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コラム

電通デザイントーク中継シリーズ

電通 髙崎卓馬×長久允×尾上永晃「拝啓、コンテンツつくってますか!?」(前編)

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映画とテレビCM制作はどう違う?

長久:「そうして私たちはプールに金魚を、」は、アメリカ人から「すごくリアルだ」と言われました。それはたぶん、セリフのリアルさというよりも、例えば主人公の兄がアダルトビデオについて語るシーンなど、ストーリー展開に不要なシーンを描いているからだと思います。なぜなら、人生における“リアル”とは、そういうノイズだと考えるからです。

尾上永晃
電通CDCプランナー/イラストレーター。2009年電通入社。デジタルを中心とした臨機応変なコミュニケーション設計を得意としている。最近の主な仕事は、集英社「こち亀40周年&終了キャンペーン」、トヨタ「エスティマ Sense of Wonder」、キリン「GREEN NAME」など一連、日清のどん兵衛「10分どん兵衛謝罪広告」「どんばれ屋閉店」など一連、日清食品「イタリア人が認めなかったパスタ」、イラスト「カンヌからの絵はがき」など。カンヌ、TCC賞新人賞、Webグランプリ(Web広告研究会)など国内外で受賞。尊敬するアーティストは秋本治氏。

尾上:すみません。普通に聞き入ってました。このままだと無言で終わってしまいそうなので質問させてください(笑)。映画を見ていて、グラタンを“ぐちゃぐちゃ”と音を立てて食べるシーンなど、ノイズはすごく気になりました。ああいうシーンはテレビCMでは描けないですからね。

長久:テレビCMは理屈で構成されますからね。でも、人間には理由は明示できなくても“グッと”きてしまうことがあります。そういうシーンを意識的に埋め込んでいます。

髙崎:長久くんのCMにはメジャーなものへの反骨をよく感じるんですが、この映画にはそういうものを実はあまり感じなくて、テーマへ極限まで純粋になろうとしているように見えます。その違いはどこに?

長久:なんでしょうかね。テレビCMは商品を売るためのものなので、いくらエモーショナルな映像であっても、帰着点は商品です。一方で、映画は思想を投げ掛ける場で、ゴールを明快に提示しなくてもいい。その違いかもしれません。

髙崎:広告って商品を出せば、どんなにシュールでも、どんなに出来が悪いシナリオでも着地してしまう。そこに甘えたらいけないという覚悟を最初に持たないと、どうしても表現として幼稚になりがちで。お約束ごとをどう破るかではなくつくれる場がその違いを生んでいるのかもしれないですね。

長久:その点で尾上くんは、自分の視点や温度感でコンテンツを生み出すことが、本当にうまいと思います。

髙崎:尾上くんたちの世代の仕事はとても面白くて。納品しても、つくり直したり、成長させたりしている。クライアントとの会話が納品後も続いている感じがする。

尾上:はい、コール&レスポンスで成り立つものが多いですね。みんなの輪の中に入っていくといいますか。

次ページ 「個人の情念で広告を成立させる」へ続く