広告会社もコンテンツに投資する時代
長久: 髙崎さんは「ショートショートフィルムフェスティバル」で審査員をされていましたね。
髙崎:僕が担当させてもらったのは「ブランデッドショート」という新部門だったんですが、映画監督たちと映像を審査するというのはとても刺激的でした。オリジナリティーがいかに大切か、をとても深く考えました。
あと印象的だったのはセレモニーで登壇した大林宣彦監督の壮絶なスピーチ。黒沢明監督からの遺言がある、と。映画という素晴らしい道具を使って、次の世代が何をなすべきかという話で鳥肌がたちました。
長久:僕も映像を見て、すごく感動しました。
髙崎:僕らの仕事はあくまで広告で、物を売るためのものだけど、同時にやっぱり世界の一部ではあると思うんです。うつむいているひとがいたら、見えなくなりかけてる大切なものに光を当てたり。そういう仕事だと思うんですね。だからそこに関してジャンルの違いという意識がないんです。
長久くんの「諦念」のように、僕には言語化されたものはまだないけれど、そういう芯のようなものはあります。そういう自分の背骨で物をつくっていかないと本物の表現にはなっていかないのかもしれないですね。
長久:今回、僕が海外に行って感じたのは、広告会社はコンテンツメーカーとして高いレベルを持つ人が集まっているということです。コンテンツをつくるための投資をすれば、広告とは別の新しい稼ぎ方の軸がもう一本できると思ったんです。
髙崎:映像ビジネスは、まだ未開拓な感じがしたんですね。
長久:広告会社の人材は、人を引き付けるための方法を延々と考える修業を積んでいるはずです。だから、映画業界の人が感性でつくるよりも意識的に、見る人の共感を狙っていけるんじゃないでしょうか。
髙崎:優秀な人はどんな職種でもみんな「流れ」をつくろうとしていますね。そういうスキルはシナリオの構築にも似たものがあるかもしれないですね。
長久:何を世の中に投じたいかですよね。僕の場合は、思想的なことを投げ掛けたいから、実は広告ではないのかな、と感じることもあります。
髙崎:2017年のカンヌライオンズは、ずいぶん思想的というか、問題提起なものが多かった気がします。これから長久くん的なスタンスが求められるんじゃないですか。
長久:でも、広告の場合は投げ掛けた先には、「だから、この商品のことを良く思ってね」という目的があります。その感じが、やや違和感があるんです。
尾上:すみません、また聞き入ってました。コトバの山本高史さんが著書で「広告は基本的に善意から成り立つ」と書かれていまして、それが面白いなと。
例えば、ペットボトルの水も創業者の思いまで立ち返れば、おいしい水で人の渇きを癒やしたいという純粋な思いから生まれたのかもしれない。そこまでたどれば、長久さんが感じる違和感もなくなるんじゃないですか。とか言ってみたりして。
髙崎:やる気のない仲間を説得してる図になってる(笑)。
長久:そうですね、人の心を動かしてビジネスにしていくことをやってみたいと思っています。高崎さんも、尾上くんも既存のフレームを壊そうとチャレンジしているので、一緒に新しいビジネスを開発していければと思います。今日は、ありがとうございました。
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