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土屋鞄はなぜ、販促物制作からEC・SNS運用まで内製化を貫くのか

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カタログがブランドのバイブル

土屋鞄では、ECサイトやSNSの運用に特化したチームはなく、カタログ、コンテンツ制作を行う販売促進部のメンバーが兼務する。販促物のライティング、デザイン、撮影は社員で行う。

「シンプルだけれど、長く愛せる丈夫なものを…と職人、デザイナーのこだわりが詰まっているのが当社の製品。それなのにECサイトが雑な仕上がりでは、ブランドとしての整合性が取れません。社内に工房があり、職人の丁寧な仕事を日々間近で見ているから、伝えることにおいてもそれぞれのチャネルで魅せる表現にこだわっています」と話すのは、販売促進部長の丸山哲生氏。

SNS、ブログ、カタログ、ECで発信する内容は、販売促進部の主要メンバーがすべてチェックすることで、世界観のブレを防ぐ。土屋鞄らしいか/らしくないか、をすり合わせるためには、社内でのコミュニケーションを円滑にすることも欠かさない。

「コンテンツの一貫性を保つには、外注に頼り過ぎずに、社内でブランドに対する理解を深め、社内人材をうまく活用しながらコンテンツを更新し続けることが大事」と河野氏は話す。

フラクタでは、ブランディングを進める企業に対して、デジタルでのベースとなる概念、思考の方向性を文字やイメージとしてまとめるようアドバイスしている。

社内向けのワークショップを行いながら、社員のブランドに対する理解を深め、ミッションステートメントのような形で、一つの基準を持つと統一感を保ちやすい。土屋鞄には明文化されたミッションステートメントはないが、長年同社が制作しているカタログが、土屋鞄らしさを共有する「バイブル」の役割を担っている。

土屋鞄の主力製品は5~10万円と決して安くはない。店舗やメディアで商品をチェックした顧客が、実際に購入するまでの期間は数カ月と、継続的な顧客接点をいかに保てるかが鍵となる。

例えばSNSには、季節の花々や工房から見える風景が度々登場する。土屋鞄の世界観を表現できる季節感や出来事などを発信し、ファンとのコミュニケーションを大事にしている。

SNSやブログ、カタログで特に人気のコンテンツは、エイジング(革の経年変化)された自社製品の紹介や職人が登場する内容。社員やユーザーが使ってい
る革製品を紹介し、長く使い続けることで生まれる製品の魅力を伝えている。実店舗でもエイジング製品を展示して、長く愛用する魅力や価値観を伝えているという。

社内の人材活用と採用で体制を強化

フラクタと土屋鞄は、世界観を維持したデジタル施策の運用強化を目指し、次なるフェーズへと進んでいる。

それが社内勉強会の実施だ。「デジタル領域の知識を増やし、企画を考える私たちとシステムを構築するフラクタさんとの共通言語を持つことが目的です。お互いの認識のズレを改善し、コミュニケーションを円滑にしていきます」と丸山氏。

合わせて、社員採用も強化している。デジタルチームの採用面接には河野氏も同
席。今いる社内人材を活用すること、そして採用を同時に進めているが、課題もある。

「土屋鞄の空気感を持っていて、かつデジタルにも詳しい人を探すのはとても難しい。ただデジタルに関する知識がなくても、土屋鞄の世界観を共有できる人、コミュニケーション能力の高い人を採用することのほうが大事だと考えます」と丸山氏。

また河野氏は「テクノロジーなど新しいことに興味があれば、十分にポテンシャルがあるため、採用後の育成、継続的な組織づくりをサポートしています」と話す。

ブランディング思考とデジタル領域のどちらもわかる人材の育成・採用が、あらゆる顧客接点で、土屋鞄のブランドパーソナリティを表現・維持していくための布石となっている。



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