魅力を伝えるコンテンツは社員とお客さまが共創する
ECサイトへのリニューアルにあたっては、主要な販路である量販店との関係性を損なうことがないよう配慮した。ECサイトで、ブランドの魅力をどう伝えるか。そのために、どんなコンテンツを発信するのが有効か。検討を重ね、「開発・製造元であるツインバードならではの情報を発信すれば、量販店での接客にも役立ててもらえるのでは」との考えの下、「季節ごとの提案」「お客様のお宅訪問」というコンテンツに行き着いた。
「季節ごとの提案」は、社員が使っている製品を自ら紹介するコンテンツ。家電には季節商品も多いため、各製品が最も求められる・活躍するタイミングを見計らって更新している。「自社製品を愛用している社員こそが、製品の一番のファンであり理解者。だからこそ、リアリティのあるコンテンツをつくることができています」と佐野氏。また「お客様お宅訪問」では、お客様の日常生活の中にあるツインバード製品の姿を紹介する。お気に入りの機能や、使い方などを、社員がお客様に直接インタビューできる貴重な機会でもある。
お客様との距離の近さは、古くから受け継がれてきたツインバードの伝統といえる。公式サイトには、「家電のお困りごと募集フォーム」が設置されており、「こんな家電があったらいいな」というアイデアや「もう少しこうだったらいいのに」という意見を随時募集するなど、同社は顧客の声に耳を傾けながら製品の開発・改良を重ねてきた。アフターサービスも充実しており、単価の比較的安い製品でも、部品ひとつから交換を受け付けている。
河野氏は、「ツインバードのブランディングが上手くいっているのは、『お客様とともに』の姿勢を貫いているから。もともとあった絆が、ブランディングによってさらに太く・強くなり、それがビジネス上の成果にも跳ね返ってきています。ブランディングとは、経営そのものだということを体現している企業です」と力を込める。
EC運営からブランディング具現化まで
ツインバードのブランディングが加速した背景としては、2015年に東京・日本橋に体験型のショールーム「ツインバード日本橋ゲートオフィス」がオープンしたことも大きいと佐野氏。製品を展示するだけでなく、製品体験会やファンイベントなどを開催し、お客様と直接触れ合える機会が大幅に増えた。
ECサイトのリニューアルを通じて強化してきたブランディングが、ショールームのオープンによってさらに加速したのだ。リアル/デジタルのどちらにも偏らない、理想的なバランスがとれていると河野氏は評価する。
ブランディングが自社にもたらした変化を、佐野氏も多分に感じているという。「ECサイトをリニューアルしてからは、ツインバードのブランドイメージの基準がECサイトに置かれるようになり、チャネルごとにブレがなくなりました。私は、ショールームで開催するイベントの企画や、カタログの制作、店頭POPのデザインなどにも関わっており、その内容や表現のトーン&マナーは、ECサイトに合わせています」。
社内では、佐野氏の業務領域が「ECサイトの運営=ブランディング」と認識されるようになり、ブランドの表現に関わるさまざまな相談が佐野氏に集まるようになってきているという。
コンテンツの拡充や人材の確保新しい挑戦にも次々着手
ECチームのメンバーは、現在6人。システムやフローを整備したことで効率化が進み、業務を分担しやすくなったという。体制が整った今、新しいことにも挑戦したいとツインバードは考えている。
例えば、グローバル人材や、女性人材、若手人材の採用だ。最も高頻度で家電を利用するのは、女性であることが多い。女性に評価される製品づくりをすることはもちろん、ECを通じて女性に響くよう製品を訴求するためにも、女性人材の力が欠かせないと佐野氏は話す。
ほかにも、ECサイトのコンテンツとして、調理家電でつくれるレシピを拡充することも検討している。「調理家電には、これまでも『レシピブック』を同梱してきました。すでに調理家電をご購入いただいたお客様にも、さらに製品の活用シーンを広げていただくために、豊富なレシピを提供していけたら」。
フラクタは今後も技術面で、ツインバードのEC運用、ブランディングをサポートしていく。「私たちの役割は、デジタル領域におけるブランディングをスムーズかつ継続的に実行できるよう環境を整えることです。いくら環境が整備されても、クライアント社内にブランドを深く愛している人がいなければ上手くいきません。ブランドを深く愛し理解している人は、そのブランドの魅力を伝えるためにリアル/デジタル関係なく、さまざまな工夫をするもの。ブランディングにおいては、デジタルの専門人材よりも、そういう人材のほうが必要です」(河野氏)。
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