宣伝会議では、2017年12月に『「欲しい」の本質 人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方』を上梓した大松孝弘氏の出版記念セミナーを開催した。ゲストに博報堂ケトルの嶋浩一郎氏を向かえ、本書のテーマである「インサイト」について公開対談を行った。当日のディスカッションの一部をレポートする。
【前編はこの記事です】
【中編】「バイアスにとらわれず、「人を見る」ことの重要性 — 大松孝弘氏×嶋浩一郎氏 【中編】」はこちら
【後編】「論理と感性で捉える「インサイト」 — 大松孝弘氏×嶋浩一郎氏 【後編】」はこちら
企画は、インサイトを捉えるからワークする
嶋:
大松さんのお仕事は商品開発という領域です。博報堂ケトルは商品開発にも関わりますが、主には広告制作やコンテンツ制作の領域で仕事をしています。しかし商品を開発するにしても、コンテンツを作るにしても、広告を作るにしても、インサイトはとても重要だと思っています。「企画は面白いからワークするのだ」と言う方もいるのですが、僕は「インサイトを捉えているからワークする」と考えています。もちろん、インサイトを捉えて、なおかつ面白い企画であれば最高です。
今日は大松さんに、インサイトとはいったい何であるか、そもそもインサイトはなぜ見つけづらいのか、どのようにインサイトを捉えればいいのか、ということをお聞きしたいと思います。
大松:
はい、よろしくお願いします。本日はお役に立てる何かを持って帰っていただければと思います。
嶋:
僕は仕事の中でも、インサイトを捉えるところに一番多くの時間を使います。「インサイトを捉えると企画はワークする」と先ほど申し上げましたが、例えば僕が企画立ち上げのメンバーの一人として関わった「本屋大賞」も、その好例だと考えています。「本屋大賞」は開始してから15年たった今もワークし続けています。本屋さんが売りたい本を自分たちで選び、売っていくという企画なのですが、毎年ミリオンセラーが多く生みだされる仕組みになっています。なぜ、そんなにもワークするのかと問われたら、インサイトを捉えているからとしか言いようがありません。
