メール受信設定のご確認をお願いいたします。

AdverTimes.からのメールを受信できていない場合は、
下記から受信設定の確認方法をご覧いただけます。

×
コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

SHOWROOMの配信者に「出口」を用意したい(ゲスト:前田裕二)【後編】

share

国内の動画配信マーケットはまだ小さすぎる

前田:本を書くときに、過去の話の割合をどれぐらいにするか、という話があって、一度バーッと書きだしてみたんです。実は本に書いてあることは1割にも満たないというか。パーソナルストーリーの中でもいろいろなストーリーがあるんですけど、それを全部話したら、編集者の方と僕の共通見解になったのは、これを淡々とノンフィクションのビジネス書で書いても、どう見ても嘘っぽいということなんです。脚色しているように見えちゃう。自分の中では編集者に伝えていることでさえディスカウントして言っているんですけど、本当に起こったことをそのまま伝えたら、そんなことあるわけないでしょと。

それが一番嫌で過去のことを話したくなかったから。たぶん過去のことを世の中に出していく、自伝的なことをやるタイミングが人生で来るとすると、もうちょっとフィクションっぽいフォーマットなんだろうなと思います。小説、映画、マンガでも、これはほぼ100%実話ですと後で言うぐらいの感覚でいいなと思っていて。

最初にその作品を見る人は実話だろうが何だろうが、そこを気にしないで見てもらって。後々でこれって実話なんだね、ということでいいと思ってるんです。先にこういう実話がありまして・・・と言うと、みんな構えて信じてくれないだろうなと思っているので。

中村:フィクションにして、実はこれは最後に前田裕二の物語だと。

権八:『ソーシャルネットワーク』じゃないけど。本当に映画になりそうな。

前田:そのためには今の100倍以上、きっちり成果を出さないといけないと思います。がむしゃらにビジネスにおいて成果を出す、ということをやりたいですね。

権八:成果出てますよね?

前田:まだ全然です! 自分の目標のまだ1合目までいってないという感じだし、そのためにやるべきことが100個あるとしたら、1.5%ぐらいしかできてないという感覚で、日々焦るんですけど。

中村:前田くんは今後、どんなものがやりたいの?

前田:大きくは2つあるんですけど、国内で言っても動画の直接課金市場って全然規模が大きくないんですよね。テレビが上で、ネットの動画が下となっているのが悔しくて仕方ないので、どう控え目に見ても対等だね、誰もが認めざるをえないぐらいの経済規模、市場を僕らのほうでつくらなければいけないと思っていて。

SHOWROOMは動画の配信アプリでは国内で売上No.1になってるんですけど、「それでこの規模かい」と思います。市場規模自体を広げないといけないと思ってるんです。中国のライブ配信市場は5千億円ぐらいの規模があるので、少なくても5分の1はやれるなと。1千億円の市場はつくれると思っていて、僕らがマーケットリーダーなので、1千億の市場規模があるときに50%のシェアがあると売上が500億円。それぐらいは絶対にやらないといけない規模感ですね。

権八:数字の目標がね。

前田:さらにもっとこの100倍、千倍思いが強いのが海外です。日本発で世界一の企業を本当につくりたいんですよね。世界No.1というとグーグルやアップルがいますけど、そのレイヤーで戦える日本初の企業ってないんですよね。

時価総額で物事を計るという発想がそもそも資本主義っぽくて嫌だ、というリスナーもいるかもしれないけど、資本主義の社会では時価総額は1つの企業の世の中に対する価値を計る指標だとすると、それを上から並べるとほぼアメリカか中国じゃないですか。42位ぐらいにトヨタが来るけど、トヨタは50年以上前の企業だから、ここ50年間、日本は資本主義のルールの中で海外を圧倒できる企業や事業を生み出せてないわけですね。

これが悔しいですね。僕は日本人を信じてるんです。勤勉性、思いやり、自分ではなく誰か他の人のために、VALUにお金を投じる人もいると思うんですね。VALUって自分自身がゲインを得ようということよりも、誰かの人生の応援になるのであればと、お金や時間を投じている人が結構いるサービスだと思うんですけど、それも似ていて。

宗教に紐づいていないのに利他的な国民性に誇りを感じるんですよね。キリスト教の教えで利他に生きろと言われているからじゃなくて、気づいたらみんな他の誰かのために何かやってあげることが気持ちいいなど。そういう国民性に誇りを感じるし、海外で仕事をして日本を客観的に見るようになってから、日本はめっちゃ素晴らしいなと。レストランに行っても、アメリカに行くとケチャップが硬い瓶で出てくるんですよね。

中村:はいはい。あのカチカチの瓶を振って。

前田:それでバッと出てくるという。僕はとにかく日本の底力をめっちゃ信じてるんですけど、結果、そうなってはないから。それはルールをつくる側に回れてないからだと思うんですね。言語、プラットフォームをつくる側に回っている人達が価値をたくさん得てるじゃないですか。

誰かがルールをつくって、その中でコンテンツを投じるのが日本は得意だと思うんですけど、僕らがルールをつくる側に今の時代に回らなければいけないなと思っていて。資本主義の次の世界が価値経済、共感経済、信用経済だとすると、それこそ日本人が戦わないといけない分野というか、マーケットだと思っているから、日本人がルールをつくる側に回れるチャンスだと思うんですね。

次ページ 「日本発のサービスが世界No.1なんだと証明したい」へ続く