宣伝会議から刊行した書籍『「欲しい」の本質 人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方』の重版を記念したセミナーが実施され、著者である大松孝弘氏とゲストのヤッホーブルーイング 稲垣聡氏が、「インサイト」をテーマに対談した。その内容の一部をレポートする。
需要が減っているビール市場で「興味関心」を創造するには
大松:
この本は「インサイト」がテーマですが、まずはなぜインサイトが重要なのか、からお話しします。
その背景には、成熟した市場でヒット商品を生み出すことの難しさがあります。多くの場合、人は形にして見せてもらうまで自分が欲しいものがわかりません。「こういうものが欲しかったんですよね?」と提示し、それを使ったり、体験したりすることで初めて、「あ、こういうものを前から欲しいと思っていました」と言うのです。
インサイトとは、皆が口にしないけれど欲しているものを見つけること。人を動かす隠れた心理です。
ここで似た言葉として挙げられる、顕在化された「ニーズ」と「インサイト」を対比してみましょう。商品が少ない時代はニーズの時代で、顕在化された問題をオペレーション力で解決していけばいい。でも今は多くの商品があり成熟している時代。「だいたい良いんじゃないですか時代」と私は呼んでいるのですが、あらゆるカテゴリーで商品に大差がない状態なので、隠れているインサイトを見つけることが上手か、下手かということがすごく大事になってきます。
ここでインサイトについて詳しいお話に入る前に、ゲストの稲垣さんから、ビールの「だいたい良いんじゃないですか時代」を解説していただければと思います。

