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コラム

澤本・権八のすぐに終わりますから。アドタイ出張所

澤本さん企画のCMに出演したことが、大きな転機になった(ゲスト:満島真之介)【前編】

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日体大に行くのを辞めた、ある「一言」

満島:どんな子というか、ただ普通に毎日海に行って、走って、汗かいて、メシ食って、という繰り返しですよ。それで歌が流れれば指笛をして歌って踊るぐらいです、本当に。

中村:日体大に行こうとしてたの?

満島:そうなんですよ。両親が日体大で、妹も日体大卒なんですけど、体育の先生になることしかずっと考えてなかったんです。

中村:そんなに一家揃ってスポーツができるんですね。

満島:スポーツしかできない、というほうが正しいかもしれないですけど。

権八:何かで読んだけど、ポロシャツをバカにされたから入学を辞めたって。

満島:そうです。丸坊主でポロシャツで、下はハーフパンツというのが体育の学生の一番オーソドックスなスタイルなんです。それで日体大の夏のオープンキャンパスにシャツをちゃんとインして、白いスニーカーと白いソックスという格好で、4年間きつい世界に入り浸ろうと思って行ったんですよ。

日体大の門の前で待っていた大学生たちに「沖縄から来ました」と言ったら、「うわー、大学生より大学生っぽいなぁ」「めっちゃ気合い入ってんね」って。その瞬間にシャッターが降りたんです。終わったと思って。ここでは何もないなという瞬間で、今まで18年間思い描いていた夢が一気にバコンと終わったんです、その一言で。

あ、ここで学ぶことは今僕にはないかもしれないと。それよりも4年間、自分の力で、この大学にいる人達より責任を持って、何か思い切り経験してやろうと思って、そこから色んなことが始まりましたね。

権八:すごいね!

満島:それが高3の夏ですね。僕は進学校の中高で生徒会長をやってたんですよ。それなのに、急に大学行かないと言い出したので大問題でしたけどね。でも頑なに行かないと言って。

澤本:ずっと思っていたものをある一瞬の感情で違うと判断できるのがすごいよね。

満島:悲しくて悔しくて、たまらなかったんですよ。えっと思って。思い描いていた世界というよりも、そうであってほしいというものが全くなかったので。でも、「まぁしょうがないな」と思いながら行く人生にはなりたくないと思ったんです。

権八:浅野さんとしゃべってるのを聞いていたら、デビュー前の旅をしていた話が面白くて。昨日知ったけどつい最近なんだね。もっと大昔かと思ったら。

満島:そうですね。二十歳のときで今28歳なので、7、8年前ですね。

中村:どんな旅をしたんですか?

満島:自転車で日本一周したんです。

権八:軽く言うけどすごいよね(笑)。

満島:結局7カ月ぐらいかかったんですけど、案外日本も世界的に見ると狭いし、小さな島国ですけど、自転車で走って見るとやっぱり広いんですよ。

澤本:そりゃそうだよ(笑)。

満島:200日間で1万2千キロぐらい走りましたかね。

権八:なんで旅しようとしたんですか?

満島:よく聞かれるんですけど、「なんで」というのはないんです。なんでがあると、なんでがわかってるから行く必要性ないと思っていて。だったら旅行かずに旅じゃないものにしたほうがいいと思っていて、僕は「なんで」がわからないから行っちゃってるんですよね。

澤本:なるほど。

満島:1個だけあったのが、自分の足で回りたいということだったんです。沖縄と東京しか知らなくて、東京で人がロボットのように見えて、心がない人達しかいないのかなと思った時期があって。でも全国はわからないじゃないですか。もしかしたら日本の本州全体がそうなのかもしれないって。人に聞くより自分の足で行ったほうがいいなと思って。でも歩きは違うなと思って自転車で行ったんです。

澤本:なるほど。

満島:それだけです。いろいろ理由をつけようと思えば、後からいっぱいつけられるんですけど、正直に言って「ただの衝動」です。だから宿も人に話しかけて聞いたりして、テントを張れる場所ないか?と聞くと、家泊まれよと言われて。だから、今も全国にそのときにお世話になったおじいちゃんおばあちゃんがみんな息子のように応援してくれてます。

澤本:すごいね!

満島:そのときは全く表に出る仕事に就くなんて思ってなかったので、映画の助監督をやっていたんですよ。

澤本:え、助監やってたの?

満島:そうなんです。それも含めて僕はずっと作品をつくる側、裏方のほうにいきたくて。表は全く興味がなかったんですけど、旅している間に何か表現がしたくなって。でも、何をすればいいかわからないんです。それで助監のときにいろいろ事務所の人達や役者とお会いしていて、いろいろと声を掛けていただいたこともあったので、一番気になる方に連絡してみようと。旅中に仙台の公衆電話から電話をかけて。だから、この業界に入ってから全部が初体験で、どんどん楽しんで、どんどん走っていこうかなと思っています。

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構成・文:廣田喜昭