原爆の記憶を絶やすことなく、平和を希求する想いを広く伝えようと、日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)とヒロシマ平和創造基金、広島国際文化財団が行っている「ヒロシマ・アピールズ」。純粋に中立な立場から「ヒロシマの心」を訴える「ヒロシマ・アピールズ」ポスターを毎年一名のグラフィックデザイナーが制作し、国内外に頒布する活動を続けている。
第1回作品の「燃え落ちる蝶」は1983年に、当時JAGDA会長だった故・亀倉雄策氏が制作し、後に「国際ポスタービエンナーレ展」で最高賞を受賞するなど、大きな反響を呼んだ。シリーズ21作目となる2018年版ポスターは、服部一成さんのデザインによる「疑問符、2018」。7月20日に広島市役所で、本ポスターは松井一實広島市長に贈呈された。
服部さんは本ポスターの制作意図について、次のようにコメントしている。「Hiroshima appeals(広島は訴える)。自分が作ろうとしているポスターは何を訴えるのか、それは自明のことのようでもあり、解けない問題のようにも思えた。残された資料に触れるにつれ、知っていたはずの広島と原爆にうちのめされた。自分には広島を代弁する資格も力量もない。まずそのことを自覚することから始めた。
広島の空に原爆のきのこ雲が浮かんだ日から73年が経つ。なにも解決せず、多くの問いかけがぽっかりと宙に浮かんだままだ。ポスターに描いたのは、そんな2018年の世界の風景だ。
こんな呑気なはてな雲のポスターで何を訴えるのかと笑われるのを恐れて、自分はこの言い訳めいた文章を書いているのかもしれない。だが、ポスターの成果とは別に、とにかく広島について考えた今回の個人的な体験にも、小さな意義はあったという気持ちもある。広島が問うていることをそれぞれが考えつづける、その先に、今はまだ見えない何かがあるのだと思いたい」。
本ポスターは8月6日〜19日に広島市内のバス停25カ所にも掲出されるほか、広島平和記念資料館、広島市現代美術館、JAGDA事務局(東京・六本木)、JAGDA ONLINE SHOP他で一般にも販売している。
8月4日から東京・六本木 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3で、ヒロシマ・アピールズ展が始まる。本展では第1回となる亀倉氏による「燃え落ちる蝶」から最新作「疑問符、2018」まで、全21作品を紹介。さらに、13歳のときに被爆し、平和への願いを込めた100枚のポスター制作に挑んだ広島出身のデザイナー、片岡脩の作品も特別展示する。
ヒロシマ・アピールズ展
8月4日~9月2日 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3 10時〜19時 休館:火曜
入場料無料
歴代制作者:
1983 亀倉雄策、1984 粟津 潔、1985 福田繁雄、1986 早川良雄、1987 永井一正、1988 田中一光、1989 勝井三雄
2005 仲條正義、2006 佐藤晃一、2007 松永 真、2008 青葉益輝、2009 浅葉克己、2010 長友啓典、2011 遠藤 享、2012 奥村靫正、2013 葛西 薫、2014 井上嗣也、2015 佐藤 卓、2016 上條喬久、2017 原 研哉、2018 服部一成
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