当時のコギャルたちに取材をして制作した
大根:その頃から。そうすると、現代軸がアラフォー世代になって、女子高時代が95年ぐらいで説得力が出てくるなと。だからちょっと待とうと話して、それでつくったんです。
権八:なるほど。まさにオンタイムじゃないですか。安室ちゃんで言うと、この映画が公開されて、すぐ引退と。
大根:さすがに引退までは仕込んでないですよ(笑)。川村くんがそこまでやっていたらすごいですよね。6年前に既に引退を仕込んでいたと。
権八:ですよね(笑)。大根監督は自身のリアルタイムが80年代とおっしゃいましたけど、90年代のサブカルが元気だった頃、「奥田民生になりたいボーイ」や渋谷直角さんの、そのへんの頃の匂いがね。実は僕もそうなんですよ。僕が90年代で、大根さんより一回り下なんですけど、今回の映画はもろに自分に時間が合っちゃって。
大根:おいくつですか?
権八:43歳です。
大根:じゃあ結構ジャストですね。
権八:だからおっサニーなんです。しかも・・・。
大根:おっサニーって、全然ピンとこなかったんですけど。
権八:すみません(笑)。これ、川村さんから言われたんですよ。「おっサニーですね」って。ドンピシャでこの世代だし、映画を見ていても、何か見覚えあるなこの光景って。女子高のロケ地も僕が高校生の頃に何回か遊びに行ったことのある、あれ鎌倉のほうの学校ですよね?
大根:そうです。あこの女子高に行ってたんですか? 盗撮しに?
権八:いえ、盗撮じゃないです(笑)。文化祭などでね。だから僕は映画を見て、コンタクトが外れるぐらいボロ泣きしました。普遍的な女の子の友情ですよね。
大根:おっさんは弱いんですよね。女子の友情ものに。
中村:弱い(笑)。あとなんであんなに大根さんが女の子だらけの世界を的確に描けるのかなと不思議で。
大根:さすがに今回は難しかった。僕が今までつくってきた映画は基本、男が主人公で、モラトリアムがちというか。それは『モテキ』にしてもそうだし、『バクマン。』で言えば何かになりたかった男の子たちの話だし、『SCOOP!』は今の中年の自分に重なる部分があるし、どこか主人公を自分に投影できる部分があったんですけど、さすがに女子高生だったことはないので。
権八:でしょうね(笑)。
大根:ルーズソックスも履いてなかったので、そこにどうやって自分を重ね合わせていくかは難しかったですね。
中村:印象的なのは、当時の女の子たちがずっと楽しそうにギャーギャーゲラゲラ笑ってるんですよね。回想して、「なんであんなにずっと笑ってたんだろうね」と言うのもグッとくるし。アラフォーになった主人公たちが、今自分がどこにいるのか見失っているなかで、当時のほうが自分はこういうものだったという実感があった・・・という話にグッと来て。そのセリフで鳥肌が立っちゃって、なんでこんなことが大根さんにわかるんだろうと。
大根:脚本書く前にもちろんオリジナルの韓国版の『サニー』という題材はあったんですけど、90年代のコギャルと置き換える時点でマインドは変わっています。そこでまずは元コギャルたち、今アラフォー世代の人に会って、いろいろな話を聞いて、それが脚本を書くうえで参考になりました。
自分はコギャルという現象を何か理屈をつけたいわけです。なぜあんな人種が生まれてきたか。90年代中盤にバブルが弾けた余波が来て、世の中が不景気になりはじめて、オウム事件、震災があって、世紀末に向けて何となく閉塞感のある空気が漂いはじめたなかで、女子高生たちだけが世紀末パーティみたいなものを、「まだ終わってねーし」と楽しんでいたということ?と聞いたら、え?全然そんなこと考えてないよと。
一同:(笑)
大根:ただ超楽しかった。だって世界が私たち中心に回ってたじゃんと。そんなことを堂々と言えるんだと。とにかく笑ってたよね、話したいこといっぱいあったよねって。
権八:そこが良いところで、当時、女子高生だった子達の気持ちと、一方で、まわりから「何だこいつら」という恐怖感もあったじゃないですか。女子高生がおやじ狩りしたりね。映画ではそっち側の目線も入っていてバランスが良くて、必ずしも女子高生側だけに偏った構成じゃないですよね。そのへんも面白いと思いました。
大根:だってさ、自分達を中心に世界が回ってるなんて思ったことないじゃないですか。
権八・中村:ないです(笑)。
大根:そんなに調子に乗れたことないじゃないですか。それがある一部の地域に起きた現象だけじゃなく、日本中の女子高生が一斉に調子に乗っていたというのはすごい時代だなと思いました。
中村:今は川村元気が思ってるかもしれないですね、俺を中心に回ってると。
大根:あいつを中心に?この映画、コケればいいのに。
権八:それはおかしいでしょ(笑)!
<END>
構成・文:廣田喜昭
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