客観視とマインドセットで“当たり前”を共感ストーリーに変える①

グローバル展開やデジタル化を踏まえた、これからの日本発ブランドはどうあるべきか—。そんなテーマを掲げ、様々な視点からブランドを語った1年間の本誌連載、またその集大成として2月25日開催したセミナーを踏まえ、土屋鞄製造所の土屋成範社長と、フラクタ社長で土屋鞄製造所の取締役も務める河野貴伸氏に改めて聞いた。

失敗談も隠さない“生っぽい”物語が人を動かす

今後のブランドの中心となるメンバーを育成する土屋鞄製造所の取り組み。特定の分野に止まらず、各種セミナーやワークショップの開催を通じて、リテラシーの均質化や担当者のモチベーションを高める。

河野:

先日のセミナーには、本誌の対談に協力してくださった福光屋の福光太一郎専務や伊藤園の角野賢一さんに加え、BAKEの黄珊珊さんにも参加していただき、活発な議論ができました。土屋鞄製造所の考え方と共通する点も多くあったと思います。

土屋:

会社の規模も歴史も、扱う商品もそれぞれ異なるお三方ですが、ブランドの背景となる確固たる「ストーリー」を持っている点が共通していました。そして自社の商品を愛し、そのクオリティに自信を持っているのに、「素晴らしいから買ってください」という手前味噌な宣伝をしないところに誠実さを感じます。

日本のものづくりは世界的に見てもレベルが高いと言われてきましたが、どんなに自信があり誇りを持っているとしても、独りよがりなPRでは、売る側の自己満足だと捉えられてしまいます。海外では、政府発信の情報やオウンドメディアですら信用されない国もあるくらいですから、こうした企業のスタンスは今後さらに問われると考えています。

その点、伊藤園が行う「茶ッカソン」や、福光屋の酒蔵見学で杉玉やしめ縄の役目について聞くような体験は、商品の背景にあるブランド価値が伝わる優れたアプローチだと感じます。またBAKEも当社と同じくクリエイティブ機能を内製化していますが、写真1枚、コピー1行の表現が「マス的」なものではなく丁寧につくられているのが素晴らしいですね。

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