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いいプロジェクトとは、次に生まれるものの種が見つかるプロジェクト【安斎勇樹×前田考歩 前編】

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議論を活性化させる問いのパターンとは?

前田:議論を活性化させる問いの法則みたいなものはあるのでしょうか。

安斎:それがなかなか難しいんです。『問いのデザイン』という本を書こうとしながら、書ききれなくて苦戦しているところです(笑)。

でも、いくつか使えるパターンはあると思っています。わかりやすいパターンで言えば、例えば「この商品とはどんなものか?」と言った時に思い浮かぶ固定観念がある場合、その固定観念の要素を少しずらしたり、反転させたりするような、コンフリクト(衝突・矛盾)があるような制約を与えると有効なことがあります。

前田:コンフリクトがある制約を与えるとは具体的にどういうことですか。

安斎:例えば、携帯電話のサービス開発なら、「携帯電話は人や情報とつながるツール。それをどうやって通信で支援するか」という固定観念があります。

そこであえて「つながらない携帯を考えてみましょう」とか、「通信を遮断することで生まれる価値ってなんだろう」みたいなことを考えつつ、でもこういう時はつながりたくないかもしれない。だったらこういうサービスがあってもいいかもしれないという風に言ってみます。逆を考えてみることが、そのものの本質を問い直すような制約を与えるのです。先ほどの前提になっていることを揺さぶるということに近いかもしれません。

前田:プロジェクトが膠着している時に、何かドラスティックなことをやるか、そのままやるか悩むことがあります。そういう時に、固定観念を揺さぶるような問いを入れることで、当たり前の施策から少し外れたものを試すようなアイデアが出てくるかもしれないということですね。

安斎:ほかにも、「AかBか」というような二元論に陥ってしまった時は、その両方を満たすCがあるはずだという信念のもとに、あえてCをお題にすることでAかBかの視点を変えるというやり方もあります。

また、メンバー特有の固有名詞とかマジックワードみたいなものが飛び交い続けていたら、その言葉の定義を問うのも有効です。「地域のために、地域のためにと言ってるけど、“地域”って何?」とか。地図を出して地域を線で囲うと、意外とみんな線を引くところが違っていたりするんですよ(笑)。

前田:言葉を疑うということはわかります。営業が数字を上げたい時に「ドライブさせよう」というように、みんながドライブ、ドライブと言っている。そういう時に、「ドライブって何だっけ?」と問うてみる、と。そういう時に、定量的な表現と定性的な表現があると思うんですけど、意識して使い分けされていますか。

安斎:そうですね…。曖昧な価値観などを精緻に語ってほしい時は、定量化するような問いを挟むことがあります。

例えば、「真の価値を創造するために自社はどうすればいいか」といったテーマの時にファシリテートしなければいけない。その時は、適当に企業をいくつかあげて、それぞれの会社がどれくらい価値創造しているか点数をつけてもらいました。すると、同じ会社でも人によって30点だったり80点だったり、点数がバラバラなんです。なぜそんな風に点数が割れるのか話をすると、裏側にある判断基準が精緻に出てきて、自分が何を価値として捉えていたのかがわかり、地に足の着いた議論ができました。

他方で、「営業でドライブかけて…」のような場合には、「あなたが思うドライブ」をレゴで作ってもらうという方法もあります。「俺のドライブはこれだ」とイメージを抽象的に表現してもらうことで、「全然ドライブかかってないんじゃない?」というような会話をしてもらう。そうやって、自社におけるドライブがかかっている状態をみんなで作っていくと、お互いのイメージが共有できて、同じ方向を向くことができます。

物差しを入れた方が精緻化できる時は定量化しますし、抽象的なイメージをみんなで共有する時は量にできないことで考えていきます。どちらにしても、いったん考えを可視化して、みんなで共通のイメージを作ったり探ったりするようなことをやりますね。

前田:定量でも定性でも、考えを可視化するということですね。


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