トレンド①:コンテンツ
コンテンツそのものの重要性がさらに高まることが確実視されている。特にプレミアムコンテンツといわれているカテゴリーに関しては、各メディアは他社との差別化のために巨額の費用を投じてコンテンツそのものを獲得する動きが加速している。
大きな規模でのM&Aなどのパワーが押し寄せ、業界再編に動く可能性がある。こういった買収のみならず、フランチャイズ形式でコンテンツホルダーとアライアンス契約をしてIPそのものを囲い込む動きもみられる。巨額のM&Aの事例としては、NBCUのDreamworks買収などがその例である。消費者の高まるコンテンツへの期待値にこたえるためにプレミアムコンテンツに投資し、他社と差別化を図る動きはさらに加速するだろうと予測される。
一方、日本のメディアでは、コンテンツの確保に関しては「自前主義」が幅を利かせており、今までは、外のコンテンツホルダーとフランチャイズ契約を締結する動きは少ない。
放送局を例にとると「番組供給社」と呼ばれるいわゆる制作プロダクションが放送局のコンテンツ制作を下支えしており、商流の面からみても切っても切れない関係が存在する。番組供給社サイドから見ても、自前でコンテンツを配給している会社は少なく、放送局にコンテンツディストリビューションを依存しているのが現状。
ただ、日本版MCNと呼ばれているユーチューバーを組織化してコンテンツ制作を行い独自にネット配信している会社などが、パーソナライゼーションの流れの中で、より個人の嗜好性に寄り添ったビジネスモデルへと発展し、消費者の支持を受ければ、従来のメディアとのコンテンツ・フランチャイズやM&Aも含めた統合化の動きに一石を投じる可能性はある。
これらの動きを受けて、民放キー局は重い腰を上げ、デジタル系のコンテンツホルダーを買収したり、囲い込んだりする動きが出てきた。
こういった動きはほんの一部であるが、少なくともコンテンツに関する従来型ビジネスモデルは変更を余儀なくされていくだろう。TV局と制作プロダクションの関係、新聞社と通信社の関係、出版社(雑誌社)とフリーランス記者の関係という受発注関係から、コンテンツをフランチャイズする、コンテンツを借りてプラットフォームとして儲ける、コンテンツ自体をビジネスにする、コンテンツそのものを売買するなどの様々なビジネススキームへの対応オプションが求められるだろう。
これらの胎動はコンテンツに対しての消費者の価値基準が変化してきたことがそのエネルギー源となっている。ディレクターや編集者のキュレート能力に依存するだけではなく、自分の好みのコンテンツを自ら見つけたいというコンテンツそのものへの多様性希求つまり、パーソナライゼーションの魔力というパワーが源流にある。
「パーソナライゼーション時代-メディア企業のマーケティング戦略」バックナンバー
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