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コラム

パーソナライゼーション時代-メディア企業のマーケティング戦略

世界で起きるメディア環境の変化を4つの視点で読み解く(前編)

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トレンド②:顧客体験

ユーザーエクスペリエンス(顧客体験)を重視したマーケティングは消費財メーカーなどのB2C企業が行ってきた施策であるが、SNSによるメディアコンテンツの個人間の共有など従来になかった顧客体験が育ってきたため、メディア業界でも重要視されるようになってきた。

視聴者がメディアの提供するコンテンツサイトやSNSへ参画することで得られるトラキングデータやコンテンツの好みなどのデータベースを活用し、顧客に対してパーソナライズされたリコメンデーションを行う動きがますます加速していく。この考え方は顧客に対してのみならず、パーソナライズされた情報に慣れてきた消費者を見据える先進的な広告主に対しても有効に機能する。

Viacomがフリーコンテンツ、サブスクコンテンツ、VOD型コンテンツをワンプラットフォームで見られるようにする「Roku」に資本参画しているのはこの顧客体験重視型の動きを象徴している。

米国では、そもそも地元のケーブルテレビ局と契約してSTB(Set Top Box)といわれるルーターを通じてTV番組を視聴する家庭が多いため、そのSTBに視聴ログが残っており、視聴者が何を見たのかを把握しやすい環境にある。最近ではOTTの視聴ログが同様の働きをしており、これらが一種のDMPとして売買されておりデータドリブンマーケティングが行いやすい環境にある。

一方日本では、顧客の視聴実態はVR社の視聴率調査という最大でも900サンプルの統計データをもとに分析されるだけで、今までは顧客ごとのパーソナライズな視聴実態データの分析はできなかった。

しかし、昨今いわゆる「ハイブリッドキャストTV」が急速に普及しており、家庭内のWi-Fiを通じてネット接続しているため、各家庭の視聴実態を把握できるようになった。現状ではTVのメーカーごとの視聴データしか取れないとか、BSキャスカードの契約者名義のデータしか取れないとかなどの問題はあるが、HUT(世帯視聴)単位での数百万の視聴実態が把握できるようになったことは大きな進歩といえる。

これらのデータベースを契約顧客の承認のもと、ネットの行動履歴データと紐づければ、顧客のメディア接触の上流から下流までのかなりの部分の行動実態を把握できる。例えば、電通はこのモデルを「STADIA」というサービスとしてビジネスモデル化しており、TVとネットを網羅した情報消費行動の優良なDMP化を目指している。

このように、メディアの消費行動に関しても米国に追随するように日本でも顧客体験を基にした分析が本格的に始まっている。マスの時代には統計学的なデータサンプルで十分だったが、パーソナライゼーションという、避けて通れない方法論がベースとなる時代においては、メディアの世界でも顧客体験をどのように特定し、どのように可視化していくのかが非常に重要である。メディア消費行動における顧客体験のデータベース、つまりデータドリブンマーケティングにおけるCDP(Customer Data Platform)をなるべく正確に構築した企業が生き残っていく可能性が高いだろう。