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プロモーションの領域を再定義し、「新しい価値」を提供するために — 『プロモーショナル・マーケティング ベーシック』(前編)

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プロモーショナル・マーケティングの定義から見直した

—明らかに、これらは単に最後の刈り取りだけを目的とした施策ではなく、もっと広い視野で行われているものですね。こういったプロモーションが、先ほどのiPhoneの上陸やSNSの普及を背景に、だんだん出てきたのですね。

宮久:そうですね。やはり、むかしSNSやスマホが無い時代っていうのは、マスメディアで認知を広めて、店頭に行くとプレミアムがあったりデモ販をやっていたりという形が主流でした。どちらかというと、マス広告が商品の価値を決めて伝えて、あとはおまけが付いているとか、値引きがあるとかっていうので買ってもらっていたんですね。

だから今回の改定ポイントとして一番に挙げなければならないのは、プロモーショナル・マーケティングの定義を見直したという事です。

具体的には、旧定義の「直接的購買動機づけを中心とするマーケティング活動」から“直接的”を取って、プロモーショナル・マーケティングを、認知や体験も含めて、生活者を最終的な購買へと導く「購買促進のための総合的な機能」として再定義しました。

(新しい定義)
「プロモーショナル・マーケティングとは、ブランドの顧客開拓と維持のために、特定化された市場における、生活者の購買行動を促進する活動である。また、その実現に向けた販売関与者への販売動機づけ活動である。」
(*販売関与者とは企業、小売業、卸売業およびそれらの担当者を指します。)

—“直接的”に限定していたのが、時代の変化とともにそうではなくなってきている。もちろん“間接的”でもなく、もはや、“包括的”な存在になっていると言えるかと思います。でも、定義を変えるっていうのは、なかなか大変な事ですよね。

宮久:マーケティングの4Pで言うところの「プロモーション」にかかわる領域は、すべてプロモーショナル・マーケティングの範囲だと定義しなおしたんですね。この図を見てもらうとわかる通り、PR、広告、生活者プロモーション、流通プロモーション、CRMの全部にかかわるんですよ、と領域を改めました。

保田:前回の版ではここまではっきりと、マーケティングの枠組みの中で(プロモーショナル・マーケティングを)定義していたわけではなかった。それを明確に、マーケティング活動全体の中でこれだけ大きな位置を占めると示したのも、大きなポイントです。

宮久:そうですね。この定義と領域にかかわる第1章「プロモーショナル・マーケティングの全体像」は、ほぼ全面的な改訂となりました。

他にも、第2章「プロモーション手法の計画と展開」、第3章「プロモーション・ツール&メディア」、第4章「関連法規等」も、今の時代に合わせてアップデートを行いました。

関連法規で言えば、景品表示法のような基礎的な知識は当然残していますが、著作権や商標権などの知的財産権に関する知識も、現代のプロモーション・プランニングでは欠かせない知識になっているので、今回、新たに加えました。全体的に、より実務に携わる人に役に立つように見直しています。

「RsEsPsモデル」とは

—今回の改定のもう一つ大きなポイントに「RsEsPs(レップス)モデル」という、新しい購買行動プロセスのモデルを提唱したというのがあると思います。

保田:今までの話の流れにもありますように、プロモーションの領域がコミュニケーションから購買まで幅広くなっている中で、われわれプロモーションに携わる人間は、それらのどこかにかかわっています。そうなると、AIDMAやAISASだけでは適応できない、そういう局面が多くなっているんじゃないかなっていうのが考える入口でした。

このテキストは基礎から体系立てて学びたい入門層を対象にしているんですけれど、そうした入門層といえども、やっぱり複雑化して多様化している生活者を相手にしなければならない。ですので、生活者の実態により即した購買行動プロセス、これがわかりやすく学べて、しかも実践で使えるものになっている必要があるんじゃないかと考えました。

入門層でも、まずはこの全体像を頭に入れながらプランニングしていくことで、複雑なプロモーション構造を単純化して理解できるようになったと思います。

宮久:1920年代にアメリカで提唱されたAIDMAや、まだスマホも存在していない2004年にインターネット時代の購買行動として電通さんが提唱したAISASといったモデルは、その当時において画期的なものでした。それをより現代の生活者の実態に合わせたのが「RsEsPs(レップス)モデル」であると、ひとまず言うことができるかと思います。

~後編に続く~



書名:プロモーショナル・マーケティング ベーシック
  「プロモーショナル・マーケター認証資格試験」公式テキスト
仕様:A5判・2C/168ページ
編集:一般社団法人 日本プロモーショナル・マーケティング協会
監修:守口 剛(早稲田大学商学学術院 教授)
発行日:2019年6月17日
定価:2,700円+税