プロモーションの領域を再定義し、「新しい価値」を提供するために — 『プロモーショナル・マーケティング ベーシック』(前編)はこちら
2019年6月に刊行された『プロモーショナル・マーケティング ベーシック』。同書では、デジタルテクノロジーの普及・進展によって大きく変化している生活者の購買行動プロセスを「RsEsPs(レップス)」としてモデル化。また、プロモーショナル・マーケティングの定義自体も見直し、ネットワーク環境が当たり前になった時代の新しいプロモーション・プランニングを提唱しています。前編に引き続き、プロジェクトの発足に携わった日本プロモーショナル・マーケティング協会の宮久哲実氏と、第1章の執筆者である読売広告社の保田耕一氏に話を聞きます。
―前回の記事ではAIDMAやAISASなどのモデルだけでは、なかなか適応できないのが現代のプロモーションだと伺いました。それは具体的にどういった状況なのでしょうか。宮久:
そもそもの話になりますが、まずAIDMAが生まれたのは1920年代のアメリカです。1920年って、100年ちかくも前で、戦前なんですよ。さすがはマーケティング発祥の国だけあって、アメリカの提唱したこのモデルが、消費者の購買行動の原型として戦中、戦後と受け継がれてきたのです。
ところがインターネットが世の中に普及し、それが消費者の購買行動に影響を与え始めた2004年に電通さんが新しく提唱した購買行動モデルがAISASです。それまでのAIDMAと大きく違う点として、SearchとShareの2つのSが入っています。これが当時としては画期的な視点でした。興味を持ったらインターネットで検索する。購買した後にも評判とか感想をネットで共有するのが、現代の消費者なのだと。
ただ、AIDMAもAISASも、左から右の時系列モデルであることに注目してください。まずアテンションがあってインタレストがあって、興味を持った後にサーチして、購買のアクションを起こした後にシェアをする。つまり左から右に、順番にステップを踏んで行動が進んでいくというモデルです。
―つまり、それぞれの行動の順番が入れ替わったり、逆行したりすることはない訳ですね。宮久:
そうです。しかし、その状況を一気に変えたのが、2008年のiPhoneの日本上陸に始まるスマートフォンの普及です。

