米・NFLの成長を支える、「ファン セントリック マーケティング戦略」とは?

32のチームが所属し、米国はもとより世界中にファンを抱える「National Football League(NFL)」。NFLでは「NFL.com」や、NFLの全試合を生中継するサブスクリプションサービス「Game Pass」など、多様なファンとのチャネルを経由して集められたデータを集約。所属する32のチームと連携しながら、事業拡大に貢献するファンの育成に取り組んでいる。11月にアドビ主催のイベントのために来日した、NFLファン セントリック マーケティング部 部長のアロン・ジョーン氏にファンをすべての活動の中心に置く、ファン セントリック戦略について話を聞いた。

—具体的にNFLでは、どのようなファン育成施策を行っているのでしょうか。

取材対象者
National Football League(NFL)
ファン セントリック マーケティング部 部長
アロン・ジョーン氏

ファンの方のNFLに対する興味・関心のレベルは人それぞれに異なります。そこで私たちが目指しているのは、どのステージの関心レベルにあるファンの方とも、コミュニケーションできる環境づくりです。NFLと何かしらの接点を持った方が、より興味を深めて、さらに熱心なファンになっていただけるよう、様々なプログラムを実施しています。

関心を持ち始めた段階のファンの方たちには、試合のハイライトやSNSのコンテンツなど、まずは無料で楽しんでいただけるコンテンツとの接点をつくるようにします。そして、これらの接点では、より深いNFLの情報を得ることができる別のチャネルのプロモーションもしています。

そして、より深いファンになってきたタイミングで、有料のサービスを案内していく。近年、NFLでは実在の選手が登場する、フットボールのバーチャルリアリティーゲームである「Fantasy Football」やすべての試合を視聴できる「Game Pass(ゲームパス)」など、実際に試合会場に足を運んでいただく以外でもNFLを楽しめるサービスを開発してきました。これらの多様な接点を通じて、ファンのロイヤル化を促進しています。

つまり、初めてNFLと接点を持った方から、年間約50万ドルを支払ってボックスシートを予約していただく方まで、すべてのファンに対するマネージメントを統括するのが、私の役割。そしてNFLでは、その戦略のすべてがファンを中心にした活動になっているのです。

—「Game Pass(ゲームパス)」はサブスクリプションモデルのサービスだそうですね。このような新しいファンとつながるチャネルが開発されたことで、変化したことはありますか。

今から20年ほど前は、私たちはファンの情報をほとんど持ってはいませんでした。当時は、NFLとのつながり方といえばテレビで試合を視聴する、スタジアムに応援に行く、ユニフォームなどのグッズを買うといったくらいだったと思います。

ですがNFLでは、近年デジタルにフォーカスをしてきました。オンラインでの接点が増えたことで現在、私たちのデータベースには1億人以上のファンの情報が登録されるまでに至っています。「Game Pass」も、ファンの方々のデータを取得できる重要な接点と言えるでしょう。NFLではファンの方々の行動をトラッキングできる手段を得たことで、より深く彼らを理解し、適切なタイミングで適切なコミュニケーションが取れるようになっています。

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