井上 邦夫(社会情報大学院大学 教授)
企業が一貫したメッセージを発信する際に一本軸となるのが「コーポレート・アイデンティティ(CI)」だ。CIの概念を捉え、組織の変革へと導いていくには。
コーポレートブランドが重要な経営課題と認識されるようになって久しい。さらに近年では、企業の評判や名声を意味するコーポレート・レピュテーションの概念にも注目が集まるようになっている。どちらも企業にとって、差別化と競争優位性をもたらす重要な無形資産といえよう。
顧客や株主、従業員などの主要ステークホルダーに企業のブランドを認知してもらい、社会全般から「良い会社だ」と思ってもらえるような、揺るぎのない確固たるレピュテーションを構築するためには、企業は自身の軸となる一貫したメッセージを発信していく必要がある。こうしたメッセージの核となるものが、企業のアイデンティティ、すなわちコーポレート・アイデンティティである。
コーポレート・アイデンティティとは、企業の個性や独自性を意味する概念である。個性や独自性を示す要素には様々なものがある。例えば名前やロゴなど表象的なものから、その企業の社風や理念、哲学といった観念的なものまである。こうした個性、独自性を構成する様々な要素を集合的にとらえた概念が、アイデンティティであり、これこそが企業のブランドやレピュテーションを形成する核となるものである。
