熊谷市長が語る、あえて“ベッドタウン戦略”をとらない千葉市の行財政改革

2009年に市長に当選し、3期目を務めている千葉市の熊谷俊人市長。市民全員参加のまちづくりを目指し、コミュニケーションを重視してきた熊谷氏が、10年間にわたって市民との協働で進めてきた行財政改革について解説した。

※本記事は2019年11月26日に実施した、社会情報大学院大学の講義「社会情報実践」の内容をレポートしたものです。

千葉市
熊谷俊人(くまがい・としひと) 市長

1978年神戸市出身。2001年早稲田大学政治経済学部卒業。NTTコミュニケーションズに入社後、2007年に千葉市議会議員に当選。2009年から3期にわたり千葉市長を務める。趣味は登山、詩吟、歴史。

雇用の受け皿でもある千葉市

千葉県は“1都3県”として、東京都、神奈川県、埼玉県と一括りにされがちです。しかし私は「1都3県という概念は捨てた方がいい」と考えています。

千葉は半島なので、アクセスの関係で周辺の1都2県から千葉市に足を運ぶ人はあまり多くありません。それは転入者の前居住地に関するデータを見れば一目瞭然です。さいたま市・横浜市・川崎市・相模原市など首都圏の政令指定都市と比較すると、千葉市は自県以外からの転入者の割合が最も少なく、県内移動が多い傾向があります。

つまり、“1都3県”という括りに頼っていると、千葉市の特異性が戦略に反映できないのです。半島にある県庁所在地だということを踏まえた戦略を立てていかなければいけません。

また、当市から東京都に通勤している市民は21.4%と、首都圏政令指定都市のなかで最も低くなっています。昼夜間人口比率*¹を見ても、97.9%とあまり差がありません。首都圏の他の政令指定都市では、昼間の人口が夜間よりも10%ほど減り90%前後となるのが普通ですから、市民が市内で働いているだけでなく、県内の近隣地域から働くために来ている人が多いことが分かります。

※1夜間人口を100とした場合の昼間人口の比率

そのため当市は、仙台市・札幌市・名古屋市などと同様に、地方の拠点都市として“雇用の受け皿”にもなっているのです。

首都圏の都市は東京に雇用を頼ることで、産業政策よりも住みやすい町としての“ベッドタウン戦略”を重視しがちです。一方、雇用の受け皿でもある当市は、働く土地としての魅力を高める政策に力を入れています。地方の拠点都市として、県益を考えた戦略を立てているわけです。

東京と世界をつなぐ幕張新都心

千葉県は海に面しているので地図上では“端”に位置しています。しかし成田空港(成田市)を擁するため、世界に開けた“窓”でもあります。人々の往来の通過点として、新たな価値をつくることができる場所なのです。

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