場所の視点
人を集め、スポーツに触れるなかで、場所へのファンを増やすことができる。今回、渋谷といった都会のど真ん中で自身のパフォーマンスを思う存分発揮できることが本当に参加者の誇りに繋がるんだと再認識した。イベントの場所づくりというのはある種、自宅や出身地がどこか、ということのように大事な要素だと思っている。
たまたま渋谷を中心に仕事をしていることもあり、最近は渋谷のような都会のど真ん中でイベントをやりたいという要望を多くもらう。“渋谷は〇〇の聖地なんです”と言われることも実際多いのだが、他の地域が躍起になって何かのルーツを考えていることを思うと、渋谷がこのイベントの出身地や聖地と言われる存在なんだと感心することが多い。
ありがたいことに、この場所でこれをやりたいんですと言われるような街はそこまで多くないことを考えると、街側としてもこの想いにどれだけ応えられるかも大事である。渋谷という街にあぐらをかかず、まだまだ可能性があることを認識して、こんな風に思ってもらえることに感謝すべきだとつくづく思う。
実際に私ができる範囲は本当に限られているが、街がどうなりたいかという目的と合致した内容であれば、そのために少しづつ前進させるための仲間を増やし実現に向けて進むことはできる。できないと思うからやらないのではなくて、やるためにはどうしたらいいのかを考えることが大事である。これが今までレッドブル時代に学んできたことで、できないという言葉は我々の中にはなかった。最終的に努力してできなかったことは確かにあるのだが、それは納得した上での結論だった。
さて、イベントの主役は誰か、についての私の最終的な結論は、イベントを作っている全ての要素が見方を変えれば主役だと思っている。つまり、主役はアスリート、観客は脇役、スタッフは裏方という物理的なものを言っているのではなくて、自分ごととしてどう捉えていけるかも是非考えていきたい。なぜなら、イベントという形も結局のところ、全ての要素が一つになりゴールに向かっていくことが大事で、一つの部分だけが成功してもイベントの成功だとは言えないと思っているからだ。
いつも思うことだが、イベントは継続してやってきたことのアウトプットの一つであり、さらに次へ繋げることもイベントのゴールである。これが一過性でなく、その派生効果や次へのステップとしてどう考えていくかを常に念頭においておくべきである。そういう意味ではそこにいる全ての人や要素がその中の主役であるのではないか。
最後になるが、メディアがその場にいなかった人にどうやって拡散できるか、繋げられるかも大事な要素である。しかしながら外部メディアとの連動は本当に難しい。タイミング的にメディアで取り上げたいアスリートやゲストがいたとか、ほかに大きなニュースがなかったとか、一般向けにアピールできるかできないかといったことなどで露出は左右されることが多い。今回は特にU-15という年代であることを考えると、まだまだメディアが注目できる要素が弱いのも確かだ。
この辺りの戦略はもっともっと練らないといけないのだが、そんな中、今後のためにも彼らのかっこいい写真や動画を中心にコンテンツを自主的に作り発信していくことは大事だと思っている。コンテンツ自体を我々で企画し発信していくといった今後に活かせるプラットフォームは、必ず将来の糧になると思っているので、その辺りは投資として最大限活用したい。
長田新子
一般社団法人渋谷未来デザイン 事務局次長兼プロジェクトデザイナー
AT&T、ノキアにて、情報通信及び企業システム・サービスの営業、マーケティング及び広報責任者を経て、2007年にレッドブル・ジャパン入社。最初の3年間をコミュニケーション統括、2010年から7年半をマーケティング本部長として、日本におけるエナジードリンクのカテゴリー確立及びレッドブルブランドと製品を日本市場で浸透させるべく従事し、その後独立。現在は2018年4月に設立された一般社団法人渋谷未来デザインの事務局次長兼プロジェクトデザイナー。
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