第73回広告電通賞の募集が2020年3月2日より開始される。注目されるのが、今回より新設された「SDGs特別賞」だ。SDGs、すなわち、持続可能な開発目標の達成に向けて、広告にできることを真摯に模索した広告主と作品に贈られる。CSR活動/ESG経営の専門家であり、SDGsの普及を進めるNTTデータ 金田晃一氏が選考委員長を務める。賞新設の背景や、広告界のSDGsへの向き合い方、今後の企業コミュニケーションの方向性などについて、選考委員長の金田氏に話を聞いた。
コレクティブ・インパクトと広告
国連サミットにおいてSDGsが採択されてから、今年で5年を迎える。2018年には世界最大のクリエイティブの祭典であるカンヌライオンズで、表彰枠として新たにSDGs部門が加わった。
金田氏は「この5年で、企業のSDGsへの向き合い方は『理解』から自社による『実践』へと変化し、さらに、カンヌライオンズの反応が示すように、2年前あたりから、他者を巻き込むより大きなインパクトを志向する『協働』フェーズへの移行が始まった。広告には『説得機能』がある。多くの人々に気づきを与え、動かす力を持つ優れた広告は、コレクティブ・インパクト(行政、企業、NPO、市民などが立場や組織を超えて、社会課題の解決に向けて取り組むアプローチ)のドライバーとなる」と語る。
そうしたグローバルな潮流も受けて、今年、総合広告賞である広告電通賞に「SDGs特別賞」が新設された。
「カンヌライオンズが広く『取り組み』を評価する一方で、広告電通賞ではあえて『広告表現』を主な評価対象にしている。『取り組み』自体の評価は、すでにCSR/ESG業界で行われている様々な試みに任せるとして、『SDGS特別賞』の選考では、持続可能な社会に向けた『広告表現』の可能性に拘って議論する。選考委員には必ずしも広告の専門家でない方々も含まれているため、SDGsと広告の関係について、これまでにない多様な解釈が飛び出してくるはず。それらを何らかの形で整理し、広く開示もしていきたい」と金田氏。
