もし、あなたが煎餅屋の店主だったら? 凡人ブランドがブランドプロミスをつくる方法

【前回コラム】「「なぜか熱量をもって語ってしまうこと」 それが、あなたのブランドの存在価値です。」はこちら

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「ブランドなんか大嫌いなブランド担当者が33年かかって、たどり着いたブランド論(実践編)」の4回目はブランドの基礎づくりにおける実務者の腕のみせどころ!もっとも難易度の高い部分であるブランドプロミスの決め方についてです。

第3回のコラムではブランドの基礎づくりの土台となる部分について明らかにしました。

その土台とは、ブランド論の教科書にも書いてある以下の3点です。

①ブランドアイデンティティ(存在価値)
②ブランドプロミス(約束)
③ブランドパーソナリティ(人格・個性)

そして、この3つの中では①「存在価値(ブランドアイデンティティ)」が一番重要と説明しました。「存在価値」とは、どう見つければいいのか。コラムの中ではあなたの企業や商品が「なぜか、こだわっていること」がないかを考えてみましょう、と書きました。「なぜか、こだわっている」ことには、あなたの「企業・商品らしさ」が凝縮されているからです。

しかしながら、「存在価値」を見つけただけでは、儲かるブランドづくりはできません。

さらに、「ブランドプロミス(約束」」によって、儲かるブランド(妄想)をつくっていくのです。

「存在価値」を生活者にとって意味あるものに変換するのが、「約束」

「ブランドプロミス」とは文字通り、あなたの企業・商品が生活者に約束することです。

ここで大切なのは、そもそも生活者は、あなたの企業・商品と何か約束を交わしたいなんてことは、これっぽっちも思っていないということ。それなのに勝手に「約束」を決めて、交わしたいわけですから、この「約束」は、生活者にとって相当に意味のあるものでなければなりません。

つまりは、あなたのブランドが「なぜか、こだわっていること(存在価値)」を生活者にとって意味のあるものに変換することで、「約束」をつくる必要があるのです。

本来は、変換なんかしなくても「存在価値=生活者にとって意味あるもの」である状態が理想です。そして、アップルやスターバックスなど、ブランド論の教科書に出てくるスーパースターブランドでは、「存在価値=生活者にとって意味あるもの」となっています。でも、これはスーパースターだからこそ。

私も、そしてあなたの企業も商品も凡人なので、生活者にとって意味ある「存在価値」を持っているということは、ほとんどありません。

だからこそ、決めた「存在価値(企業・商品らしさ)」を「約束」へ変換する必要が出てくるのです。

あなたの企業が世の中からなくなって、生活者が損をすることはある?

具体的に事例を用いながら、どのように約束を決めていくかを説明します。

あなたが仮に生活者から
「あなたの企業・商品が世の中からなくなっても、他の企業・商品があるので、私はまったく困らないと思う。どんな損するがあるの?」とか
「あなたたちが存在することで私に対してどんな良いことができると、(自分勝手に)思っているの?」と質問されたとします。あなたはどう答えますか?

実は、この時の答えこそが、「約束」になります。

では、第3回の煎餅屋(せんべいや)の店主の例で考えてみましょう。

煎餅屋の店主であるあなたは、自らのブランドアイデンティティ(存在価値)が「醤油煎餅にこだわる」ことであることに気付きました。これで存在価値は決まりです。

しかし、もちろんこれだけでは、儲かる「妄想」はできません。

なぜなら、あなたが醤油煎餅にこだわるのは、あなたの勝手で生活者には意味のないことだからです。

他にも、おいしい醤油煎餅屋はいっぱいありますし、わざわざ煎餅屋に行かなくても、コンビニに行けば安くて美味しい醤油煎餅が手に入ります。

そんな中で、あなたのお店の煎餅のことを知ってもらって、何となく好きになってもらうためには、どんな「約束」をつくればよいのでしょうか?

ここで、煎餅屋の店主であるあなたは、生活者からの質問、「あなたの煎餅が世の中からなくなっても、他の煎餅があるので、私はまったく困らないのだが、どんな損があるの?」「あなたの煎餅が存在することで私に対してどんな良いことができると、(自分勝手に)思っているの?」に対する答えを考えました。

そして、あなたは思い出しました。

生まれ故郷の山形県で昔食べていた、地元特産の醤油にこだわった、おばあちゃん手作りの煎餅のことを。

そして、幼い頃に食べた、あの醤油煎餅の味が忘れられず、だからこそ山形県の醤油を使った醤油煎餅が日本で一番おいしいと自分勝手に思っている。だから山形の米と醤油を使って、手焼きにこだわっているのだ、と気づきました。

さて、ここで質問と答えを整理しましよう。

・どんな損があるのか→日本一美味しい山形の醤油煎餅を知らずに死んでいく。
・どんな良いことがあるのか→あなたの人生で、一番おいしいと思う煎餅が食べられる。

つまり、約束は「山形県の米と醤油にこだわる醤油煎餅が日本一美味しいと思っていて、あなたもこの醤油煎餅を食べたら絶対美味しいと思う」です。

もっとすごい約束とか、爆発的に儲かりそうな約束を期待された方がいるかもしれませんが凡人ブランドには、そもそも立派な約束などできません。

でも、この「約束」は山形県出身の人にはすごくうれしくないでしょうか。きっと、他の煎餅屋さんがなくなってもよいけど、あなたの煎餅屋はなんとなく残って欲しいと思うのではないですか。

山形県出身者以外の方でも、「そんなに美味しいと言うのなら一度なら食べてみよう」と思いませんか?
爆発的に儲かる約束(さらには妄想)をつくるなど、凡人ブランドには無理ですが、そこそこ儲かるブランド(妄想)をつくることはできるのです。

次ページ「日本にもスターブランドは存在する!?」へ続く

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片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)
片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。現在は 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)による企業ブランド構築、マスとデジタルのB2C商品広告展開、広告媒体の購入、グローバルグループWEB統括を担当。日本広告学会員。

片山 義丈(ダイキン工業 総務部/広告宣伝グループ長/部長)

1988年ダイキン工業入社、総務部宣伝課に配属。1996年広報部 広報担当、2000年広報部広告宣伝・WEB担当課長を経て2007年より現職。業界5位のダイキンのルームエアコンを一躍トップに押し上げた新ブランド「うるるとさらら」の導入や、ゆるキャラ「ぴちょんくん」ブームに携わる。現在は 統合型マーケティングコミュニケーション(IMC)による企業ブランド構築、マスとデジタルのB2C商品広告展開、広告媒体の購入、グローバルグループWEB統括を担当。日本広告学会員。

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