広告主とエージェンシーのよくある議論「売上をとるか、クリエイティブをとるか」
広告主やブランドとエージェンシーとの間で、広告においてよく議論になることはなんでしょうか。それは、広告主は「売上など結果の出る広告」を目指し、エージェンシーは「クリエイティブの質が高い広告」を目指すという齟齬です。
このコラムでも年初のそごう西武の新聞広告を取り上げましたが、その議論はたいてい「ブランドイメージ広告」と「販促・ダイレクトレスポンス」の争いとして語られます。前者はクリエイティブの質は高いかもしれないが、売上には結びつかず、後者はクリエイティブの質は低いかもしれないが売上を上げるには効果的であるとし、マーケティングの世界で一般論として語られてきたことです。
この問題に対してWARCの提言は、過去の2011年から2019年の10年間の広告キャンペーンに関するデータベースの分析から、結果をもたらす広告効果を上げるためには、彼らが「Creative Commitmentクリエイティブ・コミットメント」と呼ぶ度合いを高めることが必要であると主張しています。つまり、ブランドに貢献する広告というのは、短期的な売上を目指す広告と相反するものではなく、同じくクリエイティブ・コミットメントという軸で同じように語ることができるというものです。
クリエイティブ・コミットメントの高さをもとにした階層は、Creative Effectiveness Ladder(クリエイティブ効果の梯子)として、レベル1から6まで6段階の構造として示しています。レベルが上がれば上がるほど、効果的なキャンペーンと言えるわけです。
このWARCの主張の趣旨は、まとめると以下の5つになります。
1 クリエイティブ・コミットメントが高いキャンペーンほど広告効果が高い。それはマーケットシェア、売上、利益に貢献する。クリエイティブ・コミットメントの高さとは、その広告の①期間の長さ、②使用するメディアチャネルの数、③広告キャンペーンの費用の3つが主要因である。
2 クリエイティブ・コミットメントの4つ目の要因は、クリエイティビティである。広告賞を受賞しているキャンペーンはそうでないものより広告効果が高い。
3 クリエイティブ・コミットメントは予算だけの問題ではない。予算が限られていたら、より少ない数のクリエイティブに集約し、期間を延長し、多くのメディアチャネルを使うことで効果を上げることができる。
4 クリエイティブ効果の梯子は、クリエイティブ・コミットメントのレベル別にクリエイティブの効果を構造化したものである。これにより、クリエイティブの質の高いキャンペーンがどのレベルに位置しているかを判断し、それぞれのレベルが目指す結果が何かを見極めることが出来る。効果の観点からは、一般的に梯子を上ることを目指すが、場合によっては特定のレベルの結果を目指す場合もあり得る。またそれぞれのレベルの効果は複数またがって現れることもある。
5 この10年全体的にクリエイティブ・コミットメントが減少しつつあり、結果的に広告キャンペーンのROIや効果が低くなっている。広告効果を最大化するためにもクリエイティブ・コミットメントを高めることが求められる。
ホワイトペーパーには具体的にカンヌライオンズを受賞した作品を、この梯子のどのレベルにあるかを分析しています。キャンペーンによっては、複数のレベルで紹介されているものもあります。つまり、それだけ効果がまたがって現れているというキャンペーンということです。
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