クリエイティブ・コミットメントを現実的にはどう考えるべきか
クリエイティブ・コミットメントを上げることが広告効果を上げるという提言は、特にエージェンシーやクリエイターにはポジティブに響くでしょう。とにかくひとつのキャンペーンの予算を上げたほうがいい、ということだからです。逆に広告主からしたら「結局、予算の話か」と思われるかもしれません。とにかく、コミットメントのなかには予算という項目が入っているのですから。
しかしながらこのWARCの提言の本質は、近年の広告・メディア業界のデジタルマーケティング偏重の方向性に対するもののように思います。つまり、従来のマスメディアからデジタルマーケティングのシフトによって、アジャイルで小規模のキャンペーンをデータドリブンでPDCAを高速で廻すことが新しい広告の考え方のようにもてはやされると、より短期間、より小規模の広告をとにかくたくさん打つ方向に行きがちだからです。
もちろんWARCはそのような流れも否定せず、彼らの言葉でいうと販促施策のような特定エンゲージメントや行動指標を目的においた「Activation(活動)」のキャンペーンも、それを目指したレベル、例えばInfluential Idea(影響を及ぼすアイデア)、Behavioral Breakthrough(行動変容のブレイクスルー)などの設定がされています。しかし、これらの効果は短期的であり、それより上位のレベルのように持続的ではないことを指摘しています。
その意味で予算が少ない場合は、小さいキャンペーンを数打って改善していくよりも、長期的な視野で大きなブランドのクリエイティブを考えたほうが理にかなっているのです。
このような視点は昨年、紹介したアレンバーグ・バス研究所のバイロン・シャープ氏の「ロイヤリティの高い顧客を狙うよりも、できる限りリーチを拡大してライトユーザーを獲得することでブランドが成長する」という考えと相性がよいです。実際にこのWARCの別のホワイトペーパーでは、バイロン・シャープの掲げるリーチ重視のマーケティングの考え方もあわせて紹介されています。WARCもバイロン・シャープもともに、ブランドの成長に効果的であるという広告は、長期間にわたって消費者の記憶に残るようにメディアを継続し、しかも多くのリーチを得られるように多くのメディアチャネルを使うことを推奨しているからです。
「マーケティング・ジャーニー ~ビジネスの成長のためにマーケターにイノベーションを~」バックナンバー
- 「タイパ」はどのように活用できるか?顧客の体験価値を高める5つのパフォーマンス(2022/11/16)
- 個人について知らなくても集団の動きは予測できる パーコレーション理論がデータ利活用に規制のある時代にマーケターに与えるヒント(2022/4/04)
- なぜ日本企業は累計3000億ドル以上、「スタチン」の売上を得られなかったのか? 「偽の失敗」を見極めてイノベーションを育む(2022/3/01)
- 日本企業からイノベーションが生まれないのは、「失敗が足りない」から?(2022/2/25)
- 「ノイズ」を避けるために、マーケターが持つべき「統計的思考」と「判断の構造化」(2022/2/18)
- マーケターが知るべき人間の判断にまつわる「ノイズ」と「無知」(2022/2/16)
- ヴァージル・アブロー風“デジタルの現実をここに”-CES2022に新たな解釈(2022/2/08)
- なぜ、シニアよりミレニアルが重視されるのか?-メディアと所得の年齢別「格差」(2021/10/06)
新着CM
-
人事・人物
パナソニック チーフ・クリエイティブ・オフィサーほか(24年6月1日、7月1日付...
-
クリエイティブ (コラム)
中村洋基さん新コラム「迂闊鬼十則〜うかつなヤツがトクするキャリアの法則」スタート
-
販売促進
福岡パルコが好調 取扱高243億円で開業以来最高
-
販売促進
CO2排出量で購買行動は変わるか JCBなどが実証実験
-
広告ビジネス・メディア
「広告」の定義、検討へ 日本アドバタイザーズ協会…広告学会、他団体などと連携
-
AD
広告ビジネス・メディア
営業を「ビジネスプロデューサー」に改称して6年「IGP」を掲げる電通に流れるカル...
-
広報
木梨憲武が森七菜にラーメンをふるまう サッポロ一番新CM発表会
-
AD
特集
OOHと生活者の交差点を考える
-
広報
「紙レシート」の年間削減量は全長約8960km 北海道稚内市からパリまでの距離相...