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コラム

そのイノベーションが、未来社会の当たり前になる。

坂井直樹×廣田周作 ニューノーマルの「好奇心とイノベーション」(前編)

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会社って何だろう、物理的な場所は関係なかった

廣田:続いての質問です。会社に行かなくても仕事ができるとなると、会社って何なんでしょうか。共同体でしょうか。

坂井:リモートワークになってあちこちに人々が散在すると、モチベーションの維持や組織としての求心力の問題が出てきます。カリスマがいるとか、会社自体にカリスマ性がないと、会社の仕事に対するモチベーションを維持するのは厳しくなる。

廣田:坂井さんがパッと思いつくところで、カリスマ性のある会社ってどこかありますか。

坂井:テスラやアップルでしょうね。僕はメーカーが好きだから。グーグルは年内、大半の社員が在宅勤務する見通しを5月末に出しましたが、リモートで会社が成り立つなら、会社って何だったんだろう、と再考するタイミングにきています。

廣田:物理的な場所じゃなかったってことは確かです。

坂井:わざわざ9時とか10時に満員電車で会社に行くっていうのは、もうおかしいな、と僕は思う。

廣田:これまで会社に勤めている人はリモートじゃなきゃいけない理由を上司に報告しなくてはいけなかったのが、逆に、会社に行かなきゃいけない理由を書くようになるってことですね。

坂井:上司は、その人の生産性(アウトプット)を全部評価していけばいいじゃないですか。従来のようなインプットではなく、信頼性を担保するブロックチェーンみたいに。

廣田:一方で、オフィスでの勤務を再開した企業も多くあります。「出勤再開うつ」っていう言葉がツイッターでトレンドワードになりました。

坂井:従来の規律に戻ろうとする、というのは、小学校からの教育の影響もあると思います。「右向け右」とか「直れ」とかは、軍事教練の名残ですしね。

廣田:それが会社っていう場所でも引き継がれているということですね。例えば、大きなものを作るときには時間的にみんなで同期させる、フィジカルに同期させることが必要なので、このやり方も効いた時期はあると思うんですけど。これから教育を変えるとしたら、どういう方向になっていくでしょうか。

坂井:例えば穴埋めドリル。もうあらかじめ答えが全部決まっていて、隠れているところの答えを埋める。これは、ものを考え出すのとは違いますよね。もう既に用意されているわけだから。

廣田:答えがあるものに対しての思考とか、暗記、知識ってことですよね。こんな意見も来ています。若い子たちは教育を変えればまだ可能性があると思いますが、すでに教育を受けてきた中年世代、変わりたいけど変われないと思っている人たちに対してアドバイスをください。

坂井:冒頭の話に戻るんだけれど、他者と違った体験とか、他者が持っていない一次情報しか、価値を生まなくなってきているんですよね。同じ教育を受けて同じ本を読んで、同じテレビを見ていたら、同じことしか考えない。ロボットの群れになりたいのか、そうじゃない自分になりたいのか。そう考えてみたらどうでしょう。僕の場合は19歳の時、ようやく反抗期が来て、日本社会に対して反抗したいと思って、アメリカに渡って会社をつくりました。大学を出て会社に勤めるというチャンスを自分で潰したわけです。「このままここにいたら俺はダメになる」と、目が覚めて「気を確かに持つためにアメリカへ行こう」と思って、ひとりで行ったんです。

廣田:勇気が必要なことだと思います。

坂井:ただ当時の僕は、本当に何も持ってなかったんですよね。皆さん、部長とか、社長とか、肩書や、所得、家族を持っているから、悩むんですよね。

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