古い蔵を再構築、長坂常が空間を手がけたニューバランスの新コンセプトストア

東京・日本橋浜町に、ニューバランスの新たなコンセプトストア「T-HOUSE New Balance」がオープンした。

日本文化に受け継がれてきた「茶室」に宿るもてなしの精神に発想を得たという本ストア。ここはショップとしてだけではなく、空間全体で表現をするギャラリーやワークショップなども行うイベントスペースとしても活用、さらにはフリーマガジン『NOT FAR(ノットファー)』(編集長:江口宏志)も発刊するなど、ニューバランスの新しい発信拠点とも言える場となる。

建物の2階には、「TOKYO DESIGN STUDIO」(以下、TDS)を併設した。TDSは、アメリカと日本のメンバーからなるデザインチームで、2012年に設立。2014年後半からTDSが手がけたアイテムをグローバルラインの一部に展開しており、2018年秋から「TOKYO DESIGN STUDIO New Balance」というブランドとして、既存のニューバランス製品とは異なる独自のブランディングでローンチしている。

そして何よりも象徴的なのが、本ストアの空間である。まず、入り口には店名の看板がない。真っ白で無機質な二階建ての建物の中に広がるのは、古い木の柱で組み上げられた空間。これは川越に残されていた築122年の日本の伝統的な蔵を移動し、鉄骨の新しい建築の中にそれを再構築したものだ。

意匠監修と内装設計を手掛けた建築家 長坂常氏(スキーマ建築計画)はこのコンセプトが生まれるまでの過程を、次のように振り返る。

「我々に建築の依頼があった時には、蔵を移築すること自体は決まっていた。そこから、古い蔵の骨組みを新築ですっぽりと覆うという計画を決めたものの、その時に感じていたやや落ち着かない感じ。これは例えば普段は全く着ることがないのに、海外で行われる表彰式などに着物を着て出席するような感覚と同じもので、それをそのまま演じるわけにはいかないと思ったのだが、覆す術がなかなか見つけられずに悩んだ。

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