コロナで社会的距離の確保が求められる中、企業が顧客はじめステークホルダーとの関係維持のために見直したいのが、コミュニケーション設計です。そこで注目されるのがソーシャルメディア。関係維持のみならず、双方向でのやり取りが、思わぬアイデアの種になることも。本稿の岩下食品社長・岩下和了氏のSNS戦略にも、広報パーソンが実践で応用できる知見が随所で見られます。
「岩下の新生姜」で全国規模の知名度を持つ食品メーカー・岩下食品(栃木県)。同社の7月22日発売の新商品「岩下漬けの素〈粉末タイプ〉」は、2019年5月、同社の岩下和了社長が、Twitter上で、「岩下漬けの素の粉!需要ありますか?」と問い掛けたところ、「軽くて良い」「液体よりも汎用性が高い」などの声を受け、開発に着手、完成に至ったという経緯がある。まさに、SNS発の商品だ。
実は同社のSNS発の商品は他にも。この“岩下ルート”ともいうべきSNSでの傾聴、新商品開発の流れはどのように生まれ、岩下社長はなぜ自身の名で発信し続けているのか。
はじめは「仕事」より「趣味」
アカウント開設のきっかけを聞くと、「2010年、音楽の趣味をきっかけにTwitterを始めました。そのうち自社商品を検索することを思い立ちました。いわゆる、エゴサーチですね。すると、毎日、平均10~20件、岩下の新生姜に関する投稿があったのです。そのほとんどが好意的な内容で、例えば『好きだ』『うまいから食べてみろ』など。僕の知らないところで、なんらお願いをしているわけでもなく、お客さまが会話を繰り広げてくださっていたのです」(岩下社長)。