【共同執筆者】

イグナイト 代表取締役社長
「Advertising Week Asia」エクゼクティブ・プロデューサー
笠松 良彦氏
博報堂において媒体・制作・PR・イベント等、コミュニケーション戦略全体を統括。電通に移りメディアマーケティング局チーフ・ストラテジストとしてメディアプランニングを中心に実施。電通とリクルートのジョイントベンチャーであるMedia Shakers代表取締役社長を務めた後、電通のコミュニケーションデザインセンターを経て2010年7月にイグナイトを設立。2006年カンヌ広告祭メディア部門プロモライオン受賞。

アクセンチュア 執行役員 インタラクティブ本部 統括本部長
黒川 順一郎氏
SIerを経てアクセンチュア入社。業界横断でIT戦略、デジタル戦略を中心としたコンサルティングサービスに従事。現在は、インタラクティブ本部 統括本部長として、「顧客体験を起点とした企業変革」の実現を世界有数のブランド企業に提供。IMJのM&A(2016年)をはじめ、デザインスタジオFjordやCGIに強みを持つMackevisionなどのブランドの日本立ち上げを率い、グループ全体で企業のビジネス成長を支援している。
Campaign Asia-Pacific主催「2019年エージェンシー・オブ・ザ・イヤー金賞」「コンサルタンシー・オブ・ザ・イヤー金賞」他、受賞多数。
Q1:
ずばり、広告会社とコンサルティング会社は「競合」すると思いますか?
Answers
Ans. by 笠松氏:一部のコンペ等、部分部分では競合するケースも発生しうる。しかし広告会社とコンサルティング会社の単純な競合ケースは減少するだろう。クライアントのマーケティング課題は複雑化・高度化しており、両者の協働・協業による課題解決が期待されているからである。
Ans. by 黒川氏:両者が競合する場面は少ないと考える。両者は、お客様企業の「予算」に対するアプローチや企業の強みが異なるほか、サービスを提供するお客様組織の部門も異なる。両者はお客様を巻き込みながら、ワンチームとなって高い付加価値を提供することが求められている。
笠松:
クライアントを取り巻く状況や社会全体の大きなトレンドを見ても、広告会社とコンサルティング会社が競合関係になることは、今後はほぼないと言ってよいかと思います。事業会社が抱えているマーケティング課題を広告やコンサルティング業界の1社だけで解決することはますます困難になりますし、相互補完的に協業することが重要になります。
黒川:
同感です。総合コンサルティング会社であるアクセンチュアも、広告・マーケティング分野に特化しているわけではなく、お客様の広告予算の獲得を目指すビジネスモデルでもありません。生活者への提供価値を向上させるために企業を変革する重要な要素として、マーケティングを位置付けています。全面競合する場面は少ないと思います。
笠松:
広告会社は、企業の宣伝部に対してメディアやクリエイティブなどと紐付き、機能を横展開しています。ビジネスの原資は宣伝費です。一方で、コンサルティング会社は経営層や経営企画部と仕事をされることが多いですよね。欧米で先行していたメディアコミッションからの脱却が日本でも進んでいるなど予算のあり方も変化しており、今は過渡期だと思います。
黒川:
私もテレビをたくさん見て青春時代を過ごしてきた世代ですし、今なお強い影響力を保持しています。また今後もある程度は変わらないでしょう。ブランド想起の効果を生み、日本の文化を形作ってきたのも、広告会社とトップクリエーターによる優れたクリエイティブ表現だったのではないかと思います。