※本記事は株式会社マスメディアンの『advanced by massmedian』に掲載された記事を表示しています。
発酵の魅力にハマりデザイナーから転身
“発酵デザイナー”という唯一無二の肩書きについて、「海外で仕事をしていても『お前みたいなヤツは見たことがない』と言われるので、けっこうレアな肩書きですね」と小倉さん。
現在37歳で、30歳までデザイナーとしてアートディレクターの仕事をしていたなかで、「20代後半に微生物の世界に出会って、5年ぐらい(自分で)お味噌などをつくったり、利き調味料をしたりして、“発酵って面白いな”と思っていた」。さらに発酵の魅力にのめり込んでいった小倉さんは、醸造メーカーなどにも足を運ぶようになり、「蔵の旦那さんと仲良くなっていくうちに、デザインの仕事を頼まれるようになった」と振り返ります。
そんな発酵好きが高じて、2014年に「てまえみそのうた うたって おどって つくれる 絵本」を発刊。その絵本の取材を受けた際、「記者の方に『小倉さんは、発酵をデザインしていますね。“発酵デザイナー”ですね』と言ってくれて。よくわからないけど“イケてる肩書きかも!?”と思って、『これから、そう名乗っていいですか?』と言ってから6年になりますね」と肩書のきっかけを語ります。
発酵と腐敗は紙一重
そもそも発酵とは、小倉さんいわく「人間の役に立つ微生物が働くプロセスのこと。大豆にいい菌が付着するとお味噌になるけど、悪い菌が付着してぐちゃぐちゃになる。それは“腐敗”なんです。いま、僕たちのあいだ(の空気中)にもすごくたくさんの菌が(浮遊して)いるんですけど、そのなかにもいい菌と悪い菌がいて。たまたまいい菌が入ると発酵になり、悪い菌が入ると腐敗になる。だから、発酵と腐敗は紙一重」。
また、日本は湿潤でたくさんの微生物が存在するため、「(食材が)腐ってしまう菌もいるので、“食べ物をダメにしたくないから”とご先祖がなんとかいい菌だけを呼び込もうと頑張ったトライアルの集体が、日本の発酵文化」と解説します。
そのため、醤油や味噌といった発酵調味料や、納豆などの発酵食品は「そういうものを設計しようと思ってできたのではない。なんとかして目の前の課題(腐敗)に対して最大のアクションを取り続けていたら、いつの間にか(発酵)文化になっていた」のだそう。
