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コラム

“Brand Focus, Market Wide” 地域発マーケティングの戦略再考

コンセプトの「見える化」で地域には新しい市場を生みだすチャンスが広がっている!

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【前回】「生産量No.1を地域活性に活かせるか!? 地元住民が自慢できる食材へ」はこちら

本コラムのコンセプトである「Brand Focus, Market Wide(ブランドの物語を濃縮すれば、市場は世界にだって広がる!)」のブランドのフォーカスについて、熊本県を代表する企業のひとつである再春館製薬所を取り上げて考察してみたいと思う。

クリエイティブ企業は、想いを「見える化」する!

再春館製薬所は、熊本に拠点を置く日本有数の通販型漢方・化粧品メーカーである。ダイレクトテレマーケティングシステムで、ストロングニッチなポジションを獲得した後、徹底した顧客満足を追求するCS部門とITを使ったデータドリブンマーケティングで海外へも展開するトップ企業にまで成長してきた、地域発のお手本と言うべき存在である。同社の売上の9割がリピート売上で占められ、それはディズニーランドに匹敵する。強いファン層に支えられている企業である。

このように、ビジネスモデルの先発性・卓越性でその成功を語られる事の多い同社ではあるが、今回は、企業ブランド、商品ブランド、企業活動といったコンセプトづくりの側面から、その成功要因に迫ってみたいと思う。

調べてみると、実に驚くほどクリエイティブで、コンセプチュアルな会社なのである。いくつか事例を挙げて紹介してみたい。

1. “年齢化粧品”―巧妙なネーミング
シミ、しわなど加齢に伴う肌トラブル用に作られた化粧品を総称するカテゴリーネームとなっているが、“年齢化粧品”というコトバを最初に使ったのが、同社の「ドモホルンリンクル」だったと記憶している。

実はこの“年齢化粧品”というワードは、アンチエイジングに代表される「加齢=敵」と考えて原因除去的アプローチを行ういわゆる西洋科学的な発想だけでなく、漢方を出発点とし、「年齢を重ねることが、幸せを重ねることでありたい」という同社の理念を反映させた東洋的なアプローチも兼ね備えた、巧妙かつ、絶妙なネーミングであると私は以前から思っている。そして、年齢に寄り添いながらも若々しくいたいと考えるターゲット女性の想いとぴったり重なることで、カテゴリーとしてしっかり定着したのだと考える。

2. 全社員の認識を一致させる“太鼓”
同社を訪問すると、はほぼ全ての部門が大きな仕切りのないワンフロアで業務を行っており、そのど真ん中に“太鼓”が鎮座しているのが見える(なかなかの絶景である)。製品やお客様の問題に気付いたら、太鼓が鳴らされ、各部門のリーダーが集まり検討し、全員へフィードバックされる。お客様第一を掲げる同社の姿勢を象徴すると共に、日々“太鼓”が鳴らされる度に全社員がそのことを意識するのである。

3. 自社すべての電気をまかなう“太陽の畑”
同社は、2014年に太陽光発電による自社電気需給率100%を実現している。そのメガソーラー施設を「太陽の畑」と名付けている。環境問題、自然エネルギーへの取り組みの姿勢をネーミングが体現し、自然と共にある企業という強いメッセージを発している。

4. “お客様プリーザー”―売上はお客様になりきることから
最後に、同社の根幹となるダイレクトテレマーケティングの顧客との接点部門の話をしたい。再春館製薬所では、そのメンバーを「お客様プリーザー(Pleaser = 喜ばせる人)」と独自のコトバで呼んでいる(コールセンターとは呼ばない)。

同社取締役社長西川正明氏によると、ITを駆使したデータドリブンマーケティングのその先に、同社がたどり着いたのが、「正しい売上とは顧客が喜んだかどうかの指標である」という考え方で、それを体現するのが「お客様プリーザー」であるとの事。

「お客様の『立場に立つ』ではなく、『なりきる』こと」を目標に、日々研鑽を重ね、一人ひとりのお客様に接している。

ほんの数例を示したが、再春館製薬所のいたる所に独自のオンリーワンのキーワードやコトバが転がっている。

「どこにもないものを、どこにもない方法で。」同社の商いの考え方であるが、まさに様々な想いが込められた、どこにもない独自の名前(コトバ)たちが、同社を形づくっているといって過言ではない。

次ページ 「名で体を表せ! コトバが新しい市場をつくる」へ続く