新しい生活様式のなかで迎える、初めての年明け。予測不能な毎日と格闘し続けた2020年を乗り越えて、迎えた2021年。広告界も引き続き、激動の1年となりそうだ。
新型コロナウイルス感染症という共通敵は、私たちの間に一体感を生み出すと同時に、共同で生活を行うコミュニティ内における個々人の価値観の違いを浮き彫りにもした。「共創」か、はたまた「分断」か。私たちの社会が向かうべき先に明かりを灯せるのは、コミュニケーションの力だ。
2020年に明らかとなった、一人ひとりの多様な価値観をそれぞれが受け入れ、さらに尊重して共創へと向かわせる上で必要なのが、コミュニケーションの力。さらには常に相対する人を理解するクリエイティビティをもって、企業や社会のコミュニケーションを進化させてきた広告界の力が生かされるはずだ。
しかし、広告界のクリエイティビティという資源をコロナ禍前と、同様の場面で発揮し続けられるとは限らない。産業界を見わたせば、以前は企業にとって資源と思われていたモノやコトが、市場の王者として君臨するための必要要件ではなくなりつつある。生活様式が変われば、産業界におけるゲームのルールも変わる。老舗企業も新興プレイヤーも、全員が同じ
スタート地点に立っての勝負が始まっているのだ。
全員が同じスタート地点に立ったいま、老舗企業は自らの歴史のなかに、現在の環境に生きる自社の資源を見つけだし、また新興プレイヤーは先人がつくった土俵ではない、新しい勝負の舞台をつくる努力を進めていく。
そこで求められるのは、自らの資源の洗い直しであり、企業や個人が有する職能の要素分解。コミュニケーションやコンテンツの企画・開発に携わる力は従来の広告・コミュニケーションの世界のなかでしか、生かされないものではないだろう。現在のスキルに紐づいた商品・サービスだけではなく、職能の本質を見極め、一人ひとりが応用展開を考えるなかで、広告界全体の未来が開けてくる。
