テレビで一言もしゃべらなかった頃も。芸能界の大恩人はさんまさん
中村:そもそも現役を引退された後、タレントとしてテレビに引っ張りだこになったきっかけみたいなものってあるんですか?
長嶋:別に引っ張りだこではないし、今もそんなことは決してないですよ。なんだろうね、タレントになったのは、別に自分が望んだわけでもないけれど…まあ野球ができなくなっちゃって、やっぱり食いぶちを探す手段がこの世界だったっていう。…シンプルにそれだけです。
権八:でも(明石家)さんまさんから誘われたことが…。
長嶋:それはもちろん、さんまさんは大恩人で。これもテレビで何度もお話しさせていただいているけど、だいたい野球選手の契約期間って2月から11月なんですよ。引退って大体10月、11月じゃないですか。もう翌月から食いぶちはなくなっちゃうんですよね。だって引退イコール給料が出ないわけですから。そういう状況の中、10月か11月に引退っていうのを余儀なくされて。さんまさんが当時持っていらっしゃったレギュラー番組とかに、ほとんど呼んでいただいて。それで食いつなぎましたよ。
澤本:(笑)。
長嶋:その後はさんまさんのレギュラー番組で、僕自身がレギュラーをいただいて。ということがあったので、やっぱり芸能界の大恩人っていうとさんまさんになりますね。羽鳥(慎一)君もその次ですけどね。
澤本:はい。
長嶋:僕はこの世界入って24年経つんですよね。今年54歳なので、野球の引退が30歳ですから。その間10年ぐらい前かな、ある方に「テレビっていうのは虚像虚飾の世界で、ある意味人格がない」ってはっきり言われたことがあったんですよ。最初ピンとこなかったんだよね。皆さんのほうがピンとくるんじゃないかなと思うんだけど、虚像虚飾と言いながらも、嘘はいけないし、例えばやらせの問題が発覚すれば番組がなくなったりもするじゃないですか。私がやらせていただいている『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系列)っていうのは、モーニング“ショー”って書いてあるでしょ?でも“ショー”といっても、別に嘘で情報を出しているわけではないんですよ。
中村:なるほどなるほど。
長嶋:もちろん、間違っちゃった時はちゃんと謝罪もするわけです。視聴者の皆様に有益な情報を出すっていう、テレビ局の公共性、公益性っていうところがベースなんだけど、僕が勝手に思っているのは、やっぱりタレントなので、虚像虚飾のニュアンスを若干つけたいなと思うわけですよ。
澤本:はいはい。
長嶋:それは、番組を盛り上げたりとか、人を笑わせられたらいいなっていうのを僕は絶対どこかで思っているから。重篤な事故や事件では無理ですよ。不謹慎になるからね。でも脱線できるネタっていうのはあるわけですよ。もっとはっきり言うと、どうでもいいネタもたくさん出すわけだ、テレビっていうのは。例えば先々週もモーニングショーでどうでもいいネタをやりましたよ。僕はどうでもいいと思っているんだけど、人間というのはそれぞれ個人個人の価値観があるから、どうでもよくないねっていう人もいる時が、僕はチャンスだと思っていて。
権八:なるほど。
長嶋:そういう時に脱線してどうでもいい話をしたいなと思うんですよ。
中村:はいはい。でもその時に「どうでもいいしょ!」って言ったらどうでもよくない人のことをある意味敵にまわしちゃうから、それは長嶋一茂さんだったらどうやって脱線するんですか?
長嶋:僕はその時は、羽鳥くんが話していたんだけど、本当に眠くなってきちゃったんだよね。
一同:(爆笑)。
長嶋:マジで。本当にどうでもいいから、眠たくなってきちゃって。後で羽鳥くんが「どうですか?」って聞いてきて、「ごめん眠くなった」ってはっきり言いましたよ。
一同:(笑)。
長嶋:羽鳥くんの番組の前に僕はテレビ朝日で『スーパーモーニング』(1993年4月〜2011年4月)に出ていたんだけど、その時はほとんどしゃべっていないからね。
中村:そうなんですか?
長嶋:ほとんどコメントしてないから。
澤本:へえーー。
長嶋:コメンテーターの方が多くて、スタジオの尺が短かったので、話す時間がなかったんですね。
澤本:なるほど。
長嶋:ほとんどしゃべっていないんだよ。あれ?僕1カ月で一言もしゃべってないって。
澤本:(笑)。
長嶋:僕がいてもしょうがないなあ、なんて。2時間の生番組の中で、コメンテーターとしてね。まあコメンテーターとして認められている、認められていないは横に置いといて、しゃべるためにテレビに出ているわけなので、1カ月っていっても週1回だけど、しゃべる時がありませんって、自分がいる意味がないじゃない。こういうことを言いたかったなぁという時ももちろんありまして。でも羽鳥くんになって、たくさんしゃべらせてもらって楽しく番組ができるようになったので、さんまさんの次の大恩人だなぁと思っているし。番組自体も生で刺激をもらえて。
やっぱり男は刺激をもらうことだね。だんだん年をとると、刺激があるものって消えてくるでしょ。でも新しい刺激って人生の中でもたくさんありますから、その刺激をちゃんと傍受できるように自分を磨いて、元気にできたらいいなって思っているんですけどね。
<中編につづく>
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